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日曜日。

青の試合と婚約者との見合いがブッキングしてしまったおかげで、究極にめかしこんだ格好で試合会場に行かなければならなかった。

首元には銀のペンダント、足元は格子柄の高級そうなミュール。髪はゆるく巻いて肩に垂らし、しかも珍しくうっすら化粧までしている。

母さんにより全体的にお嬢様風ファッションでまとめられたのだが、せめてもの抵抗としてミニスカニーハイは奪い取ってきた。やはりワンピースは無いと思うのだ。

なんてぶつぶつ言っている間に、目的地が見えてきた。奥多摩体育館、場末な感じのその名に恥じず、家からかなり遠かった。


選手用通用口と書かれた門を通り過ぎかけ、足を止める。
青の話によれば、基本的に観客はバスケ関係者しかいないらしい。
入場受付と書かれた看板はあるけれど、まさか清桜中と言って入れる訳がないだろうし。

どうしようかと悩んでいると、通用口からちょうど人が出てきた。

青だ。

「お、青〜」
ぶんぶんと手を降ると、ユニフォーム姿の青は目を見開いた。

「渡……? 何だよそのカッコ」
「なぜに疑問形? てかここから入っていいの?」
「あ、ああ」


扉の向こうは、もろ体育館だった。パイプ椅子がコートを囲むように並べられ、20個ずつぐらいの固まりごとに学校名が書かれた紙が垂れ下がっている。どうやらそこが応援席らしい。

「今日この後すぐに人に会わなきゃいけなくてさ。ま、着替える時間無いし、仕方ないじゃん?」

どこに座ればいいの、と聞こうとして、返答がないことに気付いた。振り向けば、青はまだ呆然としている。
わたしが顔を覗きこむと、ようやく我に返ったようだった。

「どした? ははーん、もしかしてわたしに見惚れちゃってたり?」
「……いや、いつもと全然違うからよ。着物の時よりびっくりした」
「そこは肯定しとこうよ。まあ、化粧してるからじゃない?」

青はまじまじとわたしの顔を見て、意外そうに「確かに」と言った。
すっごい失礼な気がするが気にしないでおくことにする。

「で、応援席ってどこ」
「あー、ヤベ。どこだっけ」
「大丈夫かキミィ」
「どっかの課長みたいだなおい」

青の様子がおかしかったのは、気のせいだったということにした。



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