21

「渡。お前に良いことを教えてやろう」

帝の説教待ちの最中に、ミドリさんは突然口を開いた。
「はあ」
「青峰がお前とつるんでいるのは、お前がバスケと無関係で無関心だからだ」

「はあ?」
あまりに唐突すぎて何を言っているのか理解できなかった。だが、ミドリさんは真顔で繰り返す。

「あいつにとってお前はバスケからの逃げ道でしかないのだよ」


「……ふーん。じゃあ、ミドリさん。こっちからも良いこと教えてあげようか」

青がどんな理由でわたしと関わっていようが、別にどうでも良かった。わたし自身も、家柄どうこうで態度を変えない青といるのは楽だったから。
「渡」から逃れられる居場所。わたしにとって青の存在価値はそれだけだった。


「おは朝の信奉者だっけ? 番組によって占いの内容が変わるって知ってる?」
「……え」
「夕方にやってる、ヒラメキーノ占いとか見てみ? 全然順位違うから。何であんたがそんなに狂信的なのかは知らんけど、占いなんてそんなもんだよ?」


魂が抜けたように立ち尽くすミドリさんの横から、これまた生気の抜けた青が戻ってきた。

「待たせたな……って緑間死んでる!?」
「細かいことは気にしなぁ〜い。キミもキミで三途の川でも見て来たような顔してますけど?」
「……俺、明日から不登校になるかも」
赤司怖すぎ、と呟くその姿に、笑いが止まらない。

「青が不登校とか、ティラノサウルスが博愛主義を掲げるよりも似合わんww」
「さっきから例えが酷すぎねぇ!?」
「……貴様ら少しは黙れ」
「あ、ミドリさん復活」


そんな馬鹿馬鹿しい掛け合いは、ジャジャジャジャーン、という悲劇的な音声によって中断された。

「運命のようだな」
「はあ? お前キモッ!」
「この曲の題名なのだよアホ峰」
「ごめん、頼むから黙ってKYコンビ」
着信は、母親からだった。

「……もしもし。何」
【ゆずちゃん!! こんな遅くまでどこをほっつき歩いてるんですか!!】
せっかく上がっていたテンションは、母親のキーキー声によって暴落した。

「そういえば、母上って最近この時間に帰ってきてなかったっけ。わたし、最近ずっと外で晩飯食ってるけど」
【初耳よそんなこと! ちょっとパパ、どうなってんの】
「用件それだけなら切るから」

【待ってゆずちゃん。今日はもう帰ってきなさい。ちゃんと話しておきたいことがあるの】
「どーしても?」

【あなたの、婚約者のことよ】



「……分かった。30分後には帰る」



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