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すっかり日も落ちて、図書館は閉館時間を迎えた。


夜道を3人で並んで歩いていると、ミドリさんが思い出したように口を開いた。

「そういえば青峰、次の試合に出ることになったそうだぞ」
「マジかよ。いつやんの?」
「来週の日曜日、奥多摩体育館に朝8時集合なのだよ。遅刻厳禁とのお達しだ」

「だりぃな。あ、渡。お前も来る?」
今日やった公式をぼんやりと復習していたわたしは、咄嗟に返答出来なかった。

「……おーい、聞こえてますかぁー?」
「うっさいなあ。耳元で叫ばなくても聞こえてるよ。バスケの試合のことでしょ? わたしが行っても大丈夫なの?」
ミドリさんは思案するように顎に手を当てた。

「他校の人間が応援に来たなんて話は聞いたことがないが……まあ赤司の許可が下りれば問題無いのだよ」

「へえ〜そう。で、何その携帯」
青に無言で携帯を差し出された。

「これか? 俺のマイ携帯」
「そんなこと見りゃ分かるわ。自分で掛けろよ」
「学校でも出来るだけ話さないようにしてんのに、電話なんて掛けたら最低3時間は説教くらうに決まってんだろ!?」

「何開き直ってんの。……まあ、見に行きたいし、わたしが掛けてあげてもいいよ」
「おおっ、お前マジ神!」
「はっはっは、もっと崇めたまえ」

あいうえお順で並ぶアドレス帳の1番上にあった『赤司征十郎』を選択し、通話ボタンを押す。
そういえばフルネームは初めて知ったかもなんて思っていると、不意に呼び出し音が途絶えた。

【もしもし? 青峰か】
声が心なしか低い。
「えっと、渡ですけど」
【渡………この前の君か。随分唐突だね。俺に何の用だい?】

「青が出る次の試合に行ってもいいか、許可を取るように言われたんだけど……わたしが行っても大丈夫?」
【ああ、そんなことか。別に構わないよ】
「そっか、良かった」
意外にあっさり許可が出た。
指でオッケーサインを出すと、青はほっとしたようにため息をついた。

【君の用件はそれだけ?】
「あ、うん」
が、帝の言葉は続く。

【じゃあ、隣にいる青峰に替わってもらえるかな?】

ちょいちょいと手招きすると、青の表情が固まった。
「今替わりま〜す」

その大きな手のひらに携帯を押し付けると、青は数メートル先までとぼとぼと歩いていった。



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