18

青はあーっと…と言葉を濁しながらポリポリと首をかいた。

「部活で同じレギュラー? みたいな。帰り道に捕まってよ、お前にどうしても会いたいって言うから」
「そんなことは言っていない。だが、青峰のことは校内で噂になっているからな。ちょうどオフだし、事の真偽を確かめにきたのだよ」

「へえ……噂になってるんだ?」
青のこの容姿だし学校でも目立つだろうが、たかが図書館通いぐらいでそんな大きな話題になるとは信じがたかった。

だが、緑の男はわたしの沈黙をどう捉えたのか、

「案ずるな。ここまで詳しい情報を知っているのは数人なのだよ」
「いや、そうじゃなくてさ。青が図書館に通っていようが何だろうが、別に噂になるようなことでもないんじゃない?」
眼鏡の奥の瞳が、わたしを射るように見据えた。
「……なるほど。これは確かに赤司の言う通りのようだな」


「自分だけ理解すんのやめてくんない? もっと分かるように言ってよ」
無意味なタメは3次元の世界では痛いだけだし、左手に巻かれた包帯も厨二くさすぎて直視できない。

「あ、もしかして形から入るタイプ?」
青は物凄い勢いで顔を逸らし、緑の男は効果音が聞こえそうなほどこめかみを引きつらせた。


「……貴様、星座は何だ」

少しの間のあとに緑男が発した言葉は、唐突かつ意味の分からないものだった。

「変人奇人ぞろいのみずがめ座ですが」
「やはりな。今日の運勢において相性運が最悪なのだよ。しかも俺は最下位」

「はあ? 星座占い?」
「ぶふっ、今日のラッキーアイテムはねぇのかよ?」
青は肩を震わせながらそう言った。

「持ってない訳がなかろう。俺は常に人事を尽くしているのだから。ちなみに今日は数学の参考書だ」
「じゃあその占いで、もしラッキーアイテムがエプロンとかだったらどうするの?」
「おまっ、例えきわどっ!!」


「当然だ。制服の上から身に着ける」

人事を尽くして天命を待つ。


少々やり過ぎだけれど、ここまで徹底すれば凄いと思った。




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