15


少し遡って数日前のこと。

「んまあ、何てこと! ちょっとパパ、どうしましょうか」
高校に進学出来なくなったことを告げると、やはり母さんが金切り声を上げたのだった。

「まあ、甘い処置だね。本来なら補導沙汰だろうけど警察にもお世話になってないみたいだし」
「そんなことを聞いてるんじゃないの。渡家にも、ゆずちゃんの未来にも傷がつくじゃない!!」
「傷付くのはわたしの未来じゃなくて、わたしの履歴書でしょ」

母さんの夢であるこの家の財産をより多く頂戴するためには、わたしが家督を継ぐことが必要不可欠だ。
まさかわたしが会社経営をする筈もないため婿養子は必然的にとることになり、わたしの非行履歴を見られては不都合という訳。

「何であなたはそんなひねくれた言い方しか出来ないの! あたしは純粋に心配してるのに……」
「おっしゃる通りひねくれてるようで。誰かさんのせいだけど」

「ゆずも母さんも止めなさい。今はこの先どうするかを考える時だろう?」
親父の正論で母さんが黙り込んだ隙に、自分の意見をねじこむ。15年越しの教訓だ。


「親父、わたしは高校受験をしたい」
「ゆずちゃん、何言ってるの。2月までもう5か月もないのよ?」 
母親はわめくが、親父は黙ってわたしを見つめる。
「分かってる。でも、やりたいの」
「私立だったらコネが無いこともないけど、ゆずはそれが嫌なんだね?」
「うん」

「そうだね……もう高校生だし自由にすればいいと思うよ。場合によっては、一人暮らしを許してあげてもいい。この家が嫌いみたいだしね」
「パパ、本気!?」

「……親父?」
目くじらを立てる母さんをなだめながら、親父はゆっくりと声を発した。

「でも、その代わり一つ条件をのんでもらうよ。ゆず」



回想は、そこで唐突に遮られた。



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