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「誠心誠意」とやけに立派な額縁に入った四字熟語は、わが学校長の座右の銘らしい。どこの企業の営業部だ、と突っこんだ職員はいなかったのだろうか。

いっそ某漫画のように「糖」とか、思い切った方が校長室のイメージアップにつながると思うのだが。


「さて、渡さん。君も分かってると思うから、前置きは抜きにして本題に入るよ」
校長は張り付けた笑みを崩さない。
「これはどういうことかね」
そして、机の上に2枚の写真を叩きつけた。

1枚は打ち上げでジョッキ片手に飲みまくっている写真。もう1枚は和室で青野郎の和菓子を食った瞬間が激写されていた。
これでは普通に盗撮じゃないか。どうなってんだ校長。

「そういうことです」
「調子に乗るのもいい加減にしたまえ。君は、自分が何をしたのか分かっているのか!」
その台詞はお宅の女生徒からも聞きました。

「酒飲んで、知り合いの菓子を頂いただけですけど」
「フン、そこはしらばっくれるか」
「え、今容疑は全て認めましたよ?」
業を煮やした校長は、今度は自身の拳を机に叩きつけた。

「渡さん。校則第21条を言ってみなさい」
「知りません」
「……男女交際を禁ずる。そう言えば思い出せるかね」
「ああ、それですか。別に、わたしは清く正しく守ってますよ。それに関しては破りたくても敗れない規則なんですよね」
リア充は爆死してほしいクチだ。

「この写真が目に入らないのか。まるでか……カップルのような真似を校内で!!」
「水戸黄門お好きなんですか」
「……ともかくだな、「好きなんですね」ともかくッ!! 御父兄の皆様からもクレームが来ているんだ。我々もこれ以上は庇えない」

「リア充爆発しろ的な?」
とうとうこめかみに青筋が浮き上がった。


「ふざけるなッ!! あの渡だからといって、もう見過ごせない。渡ゆずりは、君の高校進学は認めない!!!」
「あ、そうですか。ありがとうございます。あと半年、受験勉強に専念しますね」
校長は唖然とわたしを見上げた。キレたいのはこっちだ。


「ここに6年もいるなんて、こっちから願い下げなんで。失礼します」

閉まる扉の隙間から見えた時計の針は、4時半を差していた。



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