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茶道部の更衣室は、和室近くの空き教室を割り当てられている。
基本的には着替えるだけの場所のため、同じ時間にシフトが入った部員しかいないのだが、今の人口密度は度をこしていた。

「ねぇ、涼太君と何で話してたの?」
「誰かと付き合ってるの?」
「どういう関係?」
「どこの学校?」

詰め寄ってくる中には部員以外の人間も混じっている。おそらく今も、音速ばりのスピードで学校中に広まり続けているだろう。

普段はあまり近付いてこない連中だが、こういう時だけはいけしゃあしゃあとやってくるらしい。

「誰とも付き合ってないし、ただの知り合い」
えー、嘘でしょ、とブーイングが上がる。ここで肯定しても陰でどろどろするくせに、否定するとそれを信じようとはしない。
ゴシップ好きの女は面倒だ。


「ちょっと、あなた達、うるさいわよ」

高2の先輩の一声で、同級生は一斉に散った。やっと着替えを再開できる、そう思ったのも束の間、
「渡さん、あの男の子達と知り合いって聞いたんだけど」
あなたもですか、先輩。

「……あんまり調子に乗らない方がいいわよ。今まであなたがしてきた数々の所業だって、あなたの家名でギリギリ許されているんだから」


それから文化祭総片付けまでの2時間は、柄の悪いリア充令嬢集団という名の軽音部に逃げこんだのだった。


果たして、わたしは生き残れるのか。次登校した時のことを想像し、バスケトリオとその首謀者を本気で呪いたくなった。
……その前に、ウチの学校の女子の怨念によってわたしが呪殺されるような気もしたが。

ため息をついていると、ぽんぽんと頭を叩かれた。
「なぁ〜に辛気臭い顔してんの。ほら、そんな時は」
「「「飲みに行こう!!」」」

だから軽音のノリは大好きだ。

「今日はパーッと行くよ!」
「「「イェーィ!!!」」」


こうして、わたしの文化祭は終わりを迎えた。



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