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さくり。
わたしは手の付けられていない和菓子を半分に切り、そのまま口に運んだ。

「あっ! 食いやがったこいつ!!」

「まだ半分あるし、大体、お茶請けの和菓子ってお抹茶を飲む前に食べるもんだよ」
やはり和菓子は甘さが控えめでよろしい。
「だからって食うことねぇだろ!? せっかく取っておいたのに何てことすんだお前」


「ねえ。青野郎」
「あ? つーか青峰だ。覚えろ」
「なんで行きずりのスリに、ここまで近付いてくるの? タクシー代だって払ったのに。あんたの方がよっぽど変じゃない?」

青野郎は残りの和菓子を頬張りながら答えた。
「んー、お前が変だからだろ」
「意味分からん」

「だって、俺達のことも知らねぇし、赤司と初対面で普通に話してるし、黄瀬見ても何も反応しねぇし、黒子にも気付いただろ? その上中身も変態と来たら、どう考えても変な奴じゃね?」
自信満々に言い切られても困るんだけど。

答えになってない、と質問を続けようとしたが、それは2号の声によって遮られた。


「おーい、青峰っちー次のとこ行くっすよー」
「おう。次バレーな」
またも畳を軋ませ、青野郎は席を立つ。やっぱりでかいなあ、なんて思っていると、

「美味かったぜ。じゃあな」

振り向きざまにそんなことを言うものだから。蹴りの一つでもくれてやろうと思っていたのに、その場を動けない。

完璧な不意打ちだった。
レジ係の後輩の、上ずった声を遠くで聞きながら、わたしは空になったお茶椀を見つめていた。
「1時でーす! シフトチェンジお願いします」


早く、着替えなければ。



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