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青峰と喧嘩。
渡ゆずりはとやらの言葉に、そういえばと今日の部活を思い出す。
どうりで青峰のプレーが荒かった訳だ。


「つか何だよこの状況……」
「まるでわたし達が成立しちゃったカップルで、気を使われた挙句それとなくみんなの輪から外されてるみたいだよね」

気管支にビールが入って、むせた。
だが、そんな俺とは対照的に、渡は淡々と続ける。

「男性陣はティガーくんが邪魔。女性陣はわたしが邪魔。ま、双方の利害が一致しちゃったみたいだし、この場のノリに乗っちゃうべきだと思うけど」
「え? ワリ、もっかい」
「早い話が、モテる奴らはムカつくからハブいたってこと」

渡はゆっくりジョッキを傾けた。
ごくごくと、美味しそうに飲む奴だ。


「それ自分で言うか」
「あら、ティガーくんだってこの中じゃダントツだと思うけど? 背高いし、帰国だし、顔だっていいじゃん」

条件反射で赤くなってしまう自分が憎い。案の定、渡は小馬鹿にしたように笑った。

「ナニコレ青より初心すか」
「〜〜っ、うっせーなっ! つか青峰にバレたら絶対殺される!」
「それは大丈夫だよ」
「お前は良くても俺がな!? ここ合コン会場だぞ!?」

「だってわたし、あんたのこと好きじゃないし」

「……そりゃ悪かったな」
「いやいや、わたしが勝手に思ってるだけだから謝らないでよ。ティガーくんは悪くないし」

黙ってビールに口をつけると、渡は「何か言いたそうだね」と俺の顔を覗き込んだ。
こうしてみても、俺を嫌いだという素振りは感じられない。


「じゃあ言うけど、俺のこと嫌いなら何でわざわざ隣に座らせたんだよ」
「あり? バレてたか。でも、そんなに大した理由じゃないよ。彼氏と喧嘩中って言ってもお持ち帰りしないでしょ、ティガーくんなら」
顔色ひとつ変えずに何をぬかす。

「……そんなリスク冒すぐらいなら、合コンなんて来んなよ」
「だって1人で飲むのはアウトだもん。気付いたら知らないベッドの中、っていう光景が目に見える。合コンだったら飲み過ぎないし、周りの目もあるし」
「青峰が聞いたら泣きそうな台詞だな」
「そうかもねぇ。何しろ、デート中に部活の友達に手振っただけで怒る奴だしね」

少しだけ渡の声のトーンが下がった。


「……もしかして、喧嘩の原因ってそれか?」
「大ピンポン」
「くだんねー。さっさとゴメンナサイしてくりゃいいのに。理由も可愛いもんじゃねぇか」

「あんたさぁ、デリカシーって言葉知ってる?」
瞬時に、吐き捨てるように返された。
普通の女のようにヒステリーでも起こすのかと思えば、ほとんど表情が変わらなくてぎょっとする。


「あとさ、青と会ってる時間が一週間あたり、わたしよりあんたの方が長いって知ってる? 青はバスケしてるときが1番楽しそうにしてるって知ってる? わたしは青をバスケから逃避させただけだけど、あんたは青をバスケに呼び戻したんだって知ってる?」



渡は言い終わると同時に、残っていたビールを一気に飲み干した。



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