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「ペペロンチーノとボローニャ風スパゲッティとマルゲリータピザと、海鮮……違った、サラミとパンチェッタのピザと煮込みハンバーグとハンバーグステーキ、ミラノ風ドリア……でございます。ベジタブルセットが4つでよろしかったでしょうか」


店員さんは抱えていた皿をすべて置き終わると、疲れ切ったようにため息をついた。

「ん。大丈夫やで」



それにしても、テーブルの上いっぱいに置かれた料理の量といったら。
わたし以外の全員が運動部の男とはいえども、これはちょっと引く。

ミスター悪代官はボローニャ風、諏佐さんとやらはドリア、あとの2人はがっつり肉を手に取った。
テーブルの真ん中に残されたピザ2枚は、足りない奴は食え、と悪代官が注文したものだった。


ちょっと多いんじゃないか、というわたしの心配は無用だったらしい。

「あっ! お前何サラミ多い奴だけ確保してんだよ!」
「お前こそ何言ってんだ。早い者勝ちに決まってんだろ」

引き続き小学生レベルのバトルを繰り広げる青達が即完食してくれそうだ。



「ゆずりは、ピザ食うか?」
「わたしはペペロンチーノだけで十分。てか、それどうにかなんないの?」
「それ?」
「敬語だよ、敬語。一体どこに忘れてきたんだか」

すると、4人とも驚いたようにわたしを見た。


「……あれ? わたし当然のこと言いましたよね?」

「だよなっ! やっぱ常識的にはそうだよな!! 俺間違ってねーよな!」
若松さんとやらがなぜか猛烈に感動している。

「えーっと?」
「誰にも突っ込まれんかったもんなぁ。ガチガチの運動部やのに」
「お前が何も言わなかったからだろうが……」

どうやらこの諏佐さんとやらが唯一の常識人らしい。心労お察しする。


「別に、若松なんかに敬語使う必要性感じねーし」
「……なぁ、1回でいい、殴らせろ」
「やなこった」

青から剣呑な空気が漂う。
わたしがいなければ、そのまま殴り合いの喧嘩になっていたことだろう。



「青、」
「……なんだよ」

「殺気立たないと先輩とご飯も食べれないの? 大体敬語とか最低限のマナーだし、青が逆ギレする理由なんてどこにもないと思うけど」


空気の軋む音がした。
先輩組は一様に凍り付き、黙り込んでしまった青の動向をうかがっているようだ。



ああ、ペペロンチーノ、もうちょっとパンチがほしいなあ。



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