桐皇組とサイゼリヤ

午前中は受験勉強をして、青の部活が終わったら一緒にご飯を食べる、というのが最近のわたしの日課。

その場所も、新しくできたラーメン屋だったり青の家だったりと様々だ。


「なんか3年前とあんまし変わってないかも」
ドリンクバーの白ぶどうをすする。今日は学生らしくサイゼリヤだ。

「……関係は変わったと思うけどな」
「まぁ、なんてったって付き合ってるし?」


その話を振ったのは自分のくせして、青は飲んでいたコーラを思いっきり気管支につまらせた。

キスもそれ以上のことだって済ませたのに、付き合ってるって言ったぐらいで照れるなんて。
でも青のそういうところは嫌いじゃない。


「青ってほんと図体でかいくせして乙女だよね」
「誰が乙女だ。ふざけんな」
「だってわたしより甘いもの好きだし? 変なところで女子力高いじゃん」
「う、うっせーよ!!」


青をいじめて和んでいると、おもむろに店内が騒がしくなった。

「それにしても奇遇やなー。今どこに住んどるんやったっけ」
「新宿のちっちゃいアパートっス。先輩は駒場の方でしたよね?」
「そーそー、大学に近いとこ探すん結構大変やったわ」
「……主に俺がな。こいつ何だかんだ言って真面目に探そうとしねぇし」


どうやら原因は今入ってきた大学生らしい。
3人とも青と比べても見劣りしないぐらいでかいから、目立つ目立つ。


感想を言おうと青に目を戻して、様子がおかしいことに気付いた。


「どした?」
「シッ。見つかったら面倒なんだよ」

どうやら知り合いらしい。

けど、青の存在感じゃ隠れるのは無理があるだろうな。
そんなことをぼんやり思っていたら、やっぱり例の3人組がわたし達の前を横切った。



「お、青峰やんか〜。今日はよう知り合いに会うわ」
「……げ、今吉サン」

眼鏡をかけた男が席の前で立ち止まると、青は露骨に顔をしかめた。


どこかで見覚えがあると思ったら、そうだ、ミスター悪代官だ。

「どうも、お久しぶりっす。というか、わたしのこと覚えてます?」
「忘れるわけないやろ、渡チャン。ワシのこと悪代官なんてぬかしおった奴、後にも先にもおらへんわ」


後ろの2人もわたしに気付いたらしく、驚いたように青とわたしを交互に見た。

「え? 桃井って彼女じゃなかったのかよ」
「……おい、非常識だぞ若松」


「はぁ? んな訳あるかよボケ。テメーの目は節穴かっつの」
「……お前の生意気ぶりは1年経っても変わってねぇなァ!?」
「あんたのバカっぷりも大概変わってねぇよ。バーカ」


思わず目をぱちくりさせる。

日本における先輩と後輩の会話として、これは成り立っていいのだろうか?


「あいつらの掛け合いも相変わらず進歩してへんなぁ」
「……あれがスタンダードでいんすか?」
「ははっ、たまげたやろ。そや、良かったら一緒に飯食べへん? せっかくやし渡チャンがおらんかった時のこと、教えるで?」


わたしは青の答えを待たずに頷いた。



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