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ポーカーはより強い役を作るために、場に捨てた手札と同数の場札と交換することができる。
自由度が高い分、ギャンブル性が極めて高いのが特徴だ。

運で勝負が決まるこのゲームなら、戦略が全ての囲碁などとはまた違った戦い方が出来るんじゃないかと思ってはみたものの。


スペードの2、ダイヤの5、ハートの7、10、J。どれを捨てたらいいものか。

しばらく悩んだ末、マキはスペードの2とハートの7を捨てた。
赤司も1枚捨てたようだ。


「ねぇ、何か賭けない? 何もないのはつまんないよ、やっぱり。あ、破産しない程度のもので」
「僕は構わないよ。ポーカーって本来、精神戦に重きを置いているものだし」
「じゃああたしが負けたら……思いつかないや。何欲しい?」

赤司は迷わず豆腐と答えた。またも首を傾げるマキに、赤司は豆腐の魅力について力説しはじめる。
マキはとうとう世の中には色んな人がいるという結論に達した。


「そっちが負けたら……」
赤司はぴくりと止まった。
まるで、そんな前提があることに驚いているかのように。

そっちこそ面白いよ。
赤司に向けて、声を出さずに呟いた。

「もういっかい、対戦をお願いしようかな」
「勿論、受けて立とう」


マキが引いたカードは、スペードの10とハートのエースだった。
ツイてない。まだ、ワンぺアだ。

一方、赤司はもう手札を交換しないようだった。テーブルの上にカードを伏せて置いている。

マキの視線に気付くと、うっすらと笑みを浮かべた。
勝利を確信できる手札。少なくともツーペアより強い役が出来ていると見て間違いない。



「へぇ、ずいぶん思いきるね」
赤司の言う通り、大きな賭けだった。
マキは10のペアを残して、3枚すべてを捨てた。

運は天に任せた。

「いいかい?」
「うん。大丈夫」

せーので手札を開いた。

赤司が持っていたのはQのスリーカード、スペードとクラブの3だった。
対するマキはKのスリーカードとスペードとハートの10。

「どちらも、フルハウスか」
「数字の中では2が1番点数低くて、Kが1番高いんだっけ」
「じゃあ……」
「あたしの勝ち、かな」
「……そうみたいだな」


赤司は驚き覚めやらぬ表情でトランプを凝視している。
ちょっと異様な雰囲気に、マキが口を開こうとした途端ーー赤司は腹を抱えて笑い出した。


「くっ、はは、あはははっ……僕、君に負けたのか」
「……何がおかしいの?」
「なんでも。ははははっ」

赤司は何を聞いても底が抜けたように笑い続けるだけだ。

一体何だと言うのか。
マキがむっとしながらトランプをケースにしまっていると、おもむろに引き戸が開く音がした。




「ごめんごめん、遅くなってしもうた。お昼できたで。お腹空いてたろうに、ごめんなぁ」

おばあちゃんはマシンガントークでまくしたてながら、どかどかと部屋に入ってきた。

ちらっと赤司を見ると、今まで笑っていたのが嘘のように、おばあちゃんの話に相槌を打っていた。


「わざわざありがとうございます。頂きます」
赤司は礼儀正しく手を合わせた。

きゃあきゃあとヒートアップするおばあちゃんを見ながら、マキは何となく腑に落ちなかった。






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