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「あーー、疲れたーーー」
赤司たちの後ろ姿が見えなくなるや否や、マキは思いっきりテーブルに突っ伏した。

悪いけれど、バスケ部のミーティングがあって心底良かったと思う。大人数で散々騒いで騒がれて。マキが滅多に使わない神経をふんだんに使ったおかげでぐったりだ。

「そう?いつもあんなもんやで。マキが慣れてないだけやろ」
「それでもあたしはちょっと勘弁してほしいな……」
「ふーん? ウチは大勢で喋ってる方が楽やけどなぁ。あんたみたいに赤司君と2人っきりとかマジ勘弁」

そう言い終わるか終わらない内に、芦屋は「そうや、マキ、おとといのハナシまだ聞いてへんで!」とテーブルを叩いた。

「……そういえば試合中から会ってないし、連絡もしてないや……心配かけたよね、ごめん」
「ホンマに。ほんっとにあのときは大変やったんやから。そっちもちゃんと順を追って説明してくれへん?」
「じゃあ、ええっと……」

トイレに行ったときちょうど菅田を攫おうとする男達に遭遇したこと。逃げようとしたが気絶させられ、旧校舎の音楽室に連れ去られたこと。

次は芦屋からの着信で目が覚めた、と言うと、芦屋はポンと手を打った。

「それ、ちょうど赤司君がおまわりさん呼んできたとこやな。杉田っちゅー奴をツテで探し出して言質とった後に」
「……本当にみんなバスケ部なの?」
「根武谷先輩が本気ですごんだら手ェ出す必要なんてあらへん」
だから言っているのだけれど。

「ていうか、そんときにはもう試合終わってたんだ?」
「そりゃあ、とっくのとうに。試合直後に飛んでったから……1時間は経ってたかな。でも、ウチと実渕先輩と葉山先輩はそこで帰されたんよ。赤司君に」

「まあ、一応警察沙汰だしね」
赤司君にウチの携帯渡したまんまやってんけど、とぶうたれながら、芦屋はマキに続きを促す。

「それで15分ぐらいで赤司達が来て、2時間くらい取調べられて、おばあちゃんにめっちゃ怒られて、」
「なんか色々すっ飛ばしたやろ」

「……昨日、上洛の学長に直接謝られて、一応大事にはしないことになった。もともとの素行もバレて、不良たちは全員、少年院行きになっ」
「だからあんたが意図的に飛ばしたラブシーンを吐けって言ってんのや」

「つつしんでお断りします」
「……チッ。ノリ悪いわー」
マキにしては珍しく、きっぱりと言い返せたように思われた。



だが、放課後の体育館にて、そんなことはやはり幻想だと思い知らされることとなる。

「あ〜らマキちゃぁん、奇遇やなぁこんなとこで。何しとるん? 帰宅部のくせして」

ぼんやりと携帯を見ていたマキの前に立ちはだかったのは、芦屋。腕いっぱいに荷物を抱えながら満面の笑みを浮かべている。
ちゃんとひと気のないところを選んだつもり、だった。

「あは、あはは……ちょっと、ね」
「やだ、照れなくてもええやん。赤司君と一緒に帰るんやろ?」
「う、うん。待っとこうかなー、みたいな」

主将は1番終わるん遅いで、と更に笑みを深くする芦屋に嫌な予感しかしない。


「部員中にアンタのこと触れ回ってくるか、ウチの雑用やるか、どっちか選び?」

「……つつしんでお受けいたします」
赤司と一緒に帰る限り、毎回この展開に持ち込まれることになるとマキは確信した。


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