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「あら、征ちゃんじゃないの!」

聞き覚えのある声が掛けられたと思ったら、正門にいつもの3人組が立っていた。今日の練習は午前だけなのか、部活用のバッグを肩に掛けていた。

「お、そいつは……」
マキに気付いた根武谷が意外そうな眼差しを向ける。

「今朝たまたま会ったから、一緒に馬術部へ行ってたんだ」
「へぇー! この子も馬術部なの?」
「いや。そういう訳でもないが。彼女は帰宅部だし」
「……ふーん?」

「それより、征ちゃん達も今からお昼でしょ? 良かったらご一緒していい?」
葉山に気を取られていたら、赤司から確認の目配せが降ってきた。

「は、はい! あたしは全然」
「じゃあ決まりだな。場所は……根武谷もいることだし、マジバにしようか」
「うっし!」
「アンタちょっとは反応したらどうなのよ」


赤司がレスラー体型の根武谷の食費を慮ってマジバにしたのは分かっていた。
それでも、いざ「それ」を目の当たりにすると、数十秒言葉を失う。

「それ、全部フィレオフィッシュ?」
「おう。昼飯だから30個だ」
けっして、ちょっと物足りなさそうにいう数ではない。
「30個も同じもので飽きないの?」
「いーや? 好きだからな」

「……どうしよう。私どこから突っ込めばいいのかしら」
「奇遇だな実渕。僕もちょうど同じことを考えていたよ」

期間限定の怪しげバーガーを手に、赤司の隣に座るとそんな会話が飛び込んできたが、マキは気にしないことにした。


「あ! そーいえば赤司のクラスって何やんの?」
「僕はよく知らないが、メイド喫茶ならぬ医者喫茶らしいな」
今の質問でどうして学園祭の出し物のことだと分かったんだろう。

赤司の国語力に拍手を送りつつ、ふとその手元を見れば、赤司は4分の1パウンダーを上品に咀嚼していた。1番高い奴だ。

「医者ぁ? よく通ったな、そんな企画。で、どこでやんだ?」
「きっとあんたの想像してるようなのとは違うわよ。たかだか理科の白衣着て、聴診器つけるぐらいでしょ」
「それに、ウチの学実が優秀でね。渋る教師相手でも上手く交渉したらしい。ほら、マネージャーの芦屋」
「へぇ、それはすごいわね」

あの赤司が芦屋のことを褒めている。そのことはマキにとって鼻が高くて、同時に少し複雑だった。


「じゃあ赤司は? えりかに色々交渉されたでしょ?」
「クラスをまとめるのに協力してほしい、って話かい? ずいぶん良い所をついてきたと思ったら、そうか、やっぱりお前の入れ知恵か」

 
「それで、赤司はどうするの?」
マキの語勢が強くなっていくのとは対称的に、赤司は余裕たっぷりハンバーガーを口に運ぶ。

「ま、お前がそこまで言うのなら、やらないこともないな」


単に反応を遊ばれただけ、というのは直感的に理解した。

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