×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


▼照れ隠しと思っていいですか


「お米一粒一粒に神様が宿ってる、って聞いた事があるわ」

秋がおにぎりを握りながら、独り言の様に言った言葉を、夏未は懸命におにぎりの形を整えながら聞いていた

「ええっ!じゃあ大変ですよね!一粒でも粗末にしたら罰が当たりますよ」

春奈が握り終わったおにぎりをお皿に置くと、秋は頷く

「時間と手間をかけて大切に作るお米だから…粗末にしない様に、と言う先人の言葉よね」

そう言った夏未は、納得出来る形に仕上がったおにぎりを見て、うん、と頷くとおにぎりをお皿に置いた
大量のおにぎりを眺め、三人は笑い合い、丁度其処へ冬花がやって来た

「そろそろお昼の時間です」
「ありがとう冬花さん」

秋が冬花に礼を言い、夏未が号令をかける

「さあ!お昼にしましょう!」





がむしゃらに、と言っていい程…メンバー達はおにぎりにかぶりついている
麦茶の入ったコップを配り歩きながら、夏未は鬼道の所までやって来た
お盆に残った最後の麦茶を手渡すと、夏未はお盆を抱えて鬼道の食べる様子を眺めている

「旨いぞ」
「私が握ったって分かるの?」
「当然だ」

俺様に不可能は無い、とでも言いたそうな顔つきで、新しいおにぎりにかぶりつく鬼道

そんな鬼道を嬉しそうに眺めながら、夏未は何かに気付く

「鬼道君」
「ん?」

おにぎりを口に運ぼうとする仕草を止めて…鬼道は夏未を見つめる

「お米には一粒一粒に神様が宿っているんですって」
「…?」
「ついてる、わよ」

そう言ってまるで母親の様に優しい眼差しで微笑むと、夏未は鬼道の左頬下についている一つのご飯粒をつまんで自分の口に入れた

「…」

その動作はスローで鬼道の瞳に写り、まるでドラマのワンシーンの様に何度も鬼道の脳内で繰り返されている

その間鬼道は呆然と呆けて口(くち)ポカーンな状態だ
恐らくメンバー達の誰もがそんな鬼道の状態を見たことは無いだろう

「鬼道君…?」

夏未の声に反応無しの鬼道は、手に持ったおにぎりと麦茶のコップを落とした

「ちょ!」

夏未は咄嗟に手に抱えたお盆でおにぎりと麦茶を受け止め、麦茶は幸いにもこぼれずに済んだ


いきなりの事に冷や汗をかきながらホッとした夏未は、訳が分からず鬼道に視線を移す

「どうしたの鬼道君!」

夏未は片手でお盆を持ち、もう片方の手で鬼道の肩を揺さぶった

鬼道の眉がぴくりと反応し、ん、と唸ると夏未に目を向ける

「わ!」

鬼道は声を上げ、顔が一瞬で茹で蛸の様に赤くなって後退った

後退して行く鬼道の後ろにはカラーコーンが並べられており、そのまま行くと明らかに転ぶ

それを知らせようと夏未は鬼道に近付くが、鬼道は真っ赤な顔のままぶんぶんと顔を横に振り、ついにカラーコーンに足元を取られ後ろ向きに転んだ

起きあがろうとした鬼道は自分のマントを踏んづけて再び転びそうになるのをこらえたが、よろけて染岡にぶつかり染岡の持っていた麦茶をひっかぶり転がっていたカラーコーンを踏み足を取られて仰向けに倒れた






「何だあの鬼道の有り様は」

豪炎寺が信じられないと言う表情をし、円堂や風丸、他のメンバー達も呆然と鬼道と夏未の様子を見ている

「鬼道君の萌えスイッチが入ったんでしょう」

一斉にメンバー達の視線が目金に集まり、目金は眼鏡を上げながら得意顔で解説を始めた

「いつもは俺様な鬼道君ですが…雷門さんが何気なく取った行動がまさに鬼道君の萌えを刺激したんでしょう…」


いつもは皆の前で平気で私が恥ずかしがる事をするくせに、たったあれだけの事でこれだけ照れるなんて…


夏未は目金の言葉を聞きながら呻いて起き上がった鬼道を眺める

其処に、春奈が夏未からお盆を受け取り鬼道に声をかけた

「まあまあお兄ちゃん照れないで!」

鬼道はきっ!と半田の方を見ると

「誰だ今俺が照れてると言ったのは!お前か半田!」

と半田に詰め寄った

「言ってないって!鬼道が照れておかしいだなんて!」
「何だとう!」

余計な事を言う半田に、やれやれと風丸が首を振る

「これくらいの事で照れてたまるか…俺はいついかなる時も冷静に相手を手玉に取…いや何事にも対応出来なければいかんのだ」


麦茶を頭から滴らせながら力説する鬼道

「俺は照れてないしデレてもいない…そもそも照れるとは何だ、恥ずかしいと言う事ではないか、何が恥ずかしいのだ、雷門は可愛いがそれが単にもっと可愛らしく俺の目に写っただけではないか…」

だろう?と鬼道は影野の両肩を鷲掴みにして同意を求めている

「俺からは何とも…」
「そもそもこんな事で瞬殺されてしまう様ではこの先困る…何とかしなければ」

そしてもはや支離滅裂である

「鬼道さんの照れ隠しは良く喋る事なんですね」

冬花がにこにこと笑いながら核心をつくと、鬼道はまたもや半田に詰め寄った

「またお前か半田、俺が照れ隠ししてるだと…?」
「だから言ってないよ!鬼道がおかしな事を喋るのは照れ隠しだなんてさ!」
「何だと!」
「…もう分かったから、…頭を拭いたらどう?」

夏未は呆れて溜め息をつきながら、タオルをぱさりと鬼道の頭に掛けて「ね?」と呟いた
その表情は幾分嬉しそうでもある



一連の言動が照れ隠しだなんて、絶対貴方は認めないだろうけど…




「…」
「おい鬼道の動きがまた止まったぞ」
「照れたのか?」
「デレたんだろ」

はっとした鬼道は染岡、風丸、マックスの方を睨みながら…右手右足、左手左足を同時に動かしぎくしゃくと近づいて行く…が、途中に転がっていたボールに足を取られてまた転んだ

「…」

メンバー達が鬼道の対処に困惑する中…秋が近付いて来て夏未にそっと囁いた

「夏未さん、嬉しそうね」

夏未は秋に「そう見える?」と返し…鬼道の様子を眺めながら、満足そうに微笑むのだった




20110513


あくまでラブコメしませんか
様への提出作品です


お題通りに書けてますでしょうか…楽しく書かさせて頂きました!ありがとうございました!





目次

[短編/本棚/TOP]