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▼喜びの行方(鬼夏編)


「やった―――!!!」

円堂が声を上げて、俺は、いや俺だけじゃなくみんなが円堂の元へ駆け寄った
口々に声を上げて喜びを露にし、騒ぎまくっている

「豪炎寺さんっ!!」

虎丸が豪炎寺に抱きついて、嬉しそうに声を上げている

「おいおい危ねえって!!」

染岡の言葉に笑いながら豪炎寺も笑顔を絶やさない
俺は、ふと視線をヤツに送る

「不動」

不動はにやりと笑って、俺達はどちらからともなく手を差し出して、握手した

「やったな」
「ああ」


いろいろあったな、コイツとも
しかし…今は良い、仲間になった


そんな事を考えていると不動は居心地悪そうに「なんだよ!」と言って慌てて手を振り払ってしまった
そんな不動を笑いながら、俺は舞い降りる紙吹雪を見上げ、歓声を送ってくれている人々を眺めた

ふと見ると、吹雪とヒロトも、同じ様に感慨深げに紙吹雪を見上げている

「絶対忘れないよ、僕」
「俺もだ…この胸に焼付けておくよ」

そんな会話が聞こえてきて、俺も…この情景を目に焼き付けておこうと辺りを見渡した…するとベンチで、マネージャー達が嬉しそうにこちらを見ているのが目に入った




トロフィーはずしりと重かった
このトロフィーにはいろんな人の想いが込められている
全ての選手達
選手達を支えるマネージャーや家族
そしてチームを、サッカーを応援してくれる全てのサポーター達の想いだ


義父さんも、見ててくれているだろうか…


そして、ベンチに戻って来た俺達を出迎えてくれたマネージャー達

「みんな整列!」

イナズマジャパンのメンバー達をマネージャー達の前に並ばせて、円堂が口を開いた

「今までありがとうございました!」
「「「ありがとうございました!!」」」

円堂に続きお辞儀をして顔を上げると、マネージャー達が涙目で嬉しそうに笑っている

「みんな!おめでとう!」
「おめでとうございます!」
「おめでとう!」
「おめでとうございます」

木野、春奈、久遠、雷門が次々に祝福の言葉を述べ…そんな様子を中継のカメラが撮していた


場が開き、メンバー達がばらけると春奈が俺の傍に駆け寄って来た

「お兄ちゃん!おめでとう!」
「ああ、ありがとう、春奈達のお陰だ」
「そんなっ!!嬉しい事言ってくれちゃって!!」

春奈は泣き出して、俺に抱きつき、俺は春奈の頭を撫でた


すると、わあっとメンバー達から歓声が上がり、春奈と2人そちらに目を向ける
見ると、豪炎寺が木野に何か言ったんだろう、木野の顔が真っ赤になって、口元を押さえている

「あの豪炎寺がカメラの前で木野に告ったぞ!!!」

風丸は興奮して俺の所に来ると、マントを引っ張った
春奈は「えええっ」と叫び、俺から離れて皆の輪の方へ走って行く
流石は元新聞部だ、行動が早い


……先を越された


「鬼道、お前今、何か対抗意識を燃やしてないか?」

するどい佐久間の突っ込みに動じず、俺は「まあな」とだけ返事すると雷門の傍へ歩み寄る


「おい佐久間、鬼道は何をする気だ」
「……わからん」


風丸が佐久間に尋ねるのが聞こえたがそんなことはどうでもいい
俺も一刻も早く全世界に俺達のことを明らかにしなければならないからな


「雷門」
「鬼道君、…やったわね」
「ああ、しかし豪炎寺に先を越された」
「え?」

雷門は木野の方を見て、ハッとした顔をする
そして安堵の表情を見せ、腕を組んだ

「先を越して貰って良かったわ…!」


甘いな雷門、俺がそんなことで諦めるとでも思っているのか?


「別に今からでも俺は構わないがな」
「!!!!」

俺が大きく息を吸って声を出そうとした瞬間、雷門が俺の口を慌てて両手で押さえた
なんと素早い行動だろうか

「ダメよ!!絶ッッッ対にダメッッ!!!」

俺は雷門の両手首を掴んで手を外す

「何故拒む…」
「何故って貴方…」

雷門は信じられないと言う表情で俺を見詰める
その表情も可愛いな

「全世界にアピールすれば、お前の父親にも、俺の父親にも、俺達の事が知られて一石二鳥ではないか」
「貴方、優勝してテンションが上がりすぎておかしくなったんじゃないの?そんな事をしたら、恥ずかしいじゃない!」
「俺は恥ずかしくない、…非の打ち所の無い完璧な俺様が相手だと知ってわざわざ手を出すヤツも居ないだろう?かえって清々するではないか」
「貴方やっぱりおかしいわ!!!」
「おかしくない、合理的だろう?そうすれば、ずっと傍に居られる」
「…!!…!!」

俺が再び口を開こうとしていると、雷門が俺の口を塞ぐ
本当に素早いな

「させないわよ…」

俺はまた雷門の手を掴んで口から無理矢理引っぺがした

「なら、条件がある」
「なによ……」

相当な力を使っているのか、雷門は息切れし…そんな俺達の様子を遠巻きに見ている風丸と佐久間は、口をあんぐりと開けている


「日本に帰ったら、デートしよう」
「えっ」
「今までお互い忙しくて、そんな暇も無かったろう?」

雷門は照れて下を向き、勢いをなくしてもじもじとし始めた

「………いいわ」

可愛らしい雷門の表情に俺は満足する
やはり全世界に自慢したいくらいだな…


すると

「夏未さんがお兄ちゃんとデートですかあああ??」

勢い良く声のした方向を見ると、春奈が目をきらきらと輝かせている
妹よ、いつの間にそんな所に陣取っていたのだ

「マジで?豪炎寺と木野、鬼道と夏未かよ!!!」

綱海の言葉に雷門がわなわなと真っ赤になった

「俺は知らんぞ、不可抗力だろう?」
「そう、そう、そうだけど…」
「堂々としていろ」

そう言って俺は雷門の肩を抱いて宣言した

「そういう訳だ、雷門に手を出したら…分かってるだろうな?」

俺の言葉にメンバーは勢い良く頷き、雷門は固まった


……本当に今日は俺にとって最高の日だ


「全く信じられないわ…!」
「俺は大満足だ」
「呆れた人ね!」

そう言い、腕を組んで俺を睨む雷門の表情に頬を緩ませながら…俺は舞い降りる紙吹雪を改めて見上げた






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