▼何度も、何度でも、君とキスをする


ちょっぴり注意






「らしくないな」

ベンチに座った途端、鬼道が心配そうな表情を隣に座って居る夏未に向けた

「こんな陽気でしょ…なんだかうとうとしてしまって…」

授業中、居眠りしそうになって居る所を偶然鬼道に発見され、事無きを得たのだ

暑過ぎず、肌寒くも無い心地良い天候
実は鬼道自身も落ちそうになった事は秘密だ

「三年になって忙しさが増したようだが、大丈夫なのか」
「今だけよ、もうちょっとしたら一段落するから」

夏未は嬉しそうな瞳を鬼道に向けて、微笑んだ

「心配してくれてるの?」
「当たり前だ」

ふふ、と笑って夏未は鬼道の肩にもたれた
ふわりと夏未の髪の香りが鬼道の鼻をくすぐる

忙しい夏未が自分の為にこうして時間を作ってくれている
それが素直に嬉しくて、鬼道はそっと夏未の肩を抱く

「こうしていると、…」

そこで言葉を止めてしまった夏未だったが...
その顔を覗き込んだ鬼道が言葉を繋いだ

「眠くなる、か?」

笑いながらそう言った鬼道を軽く睨みながら、夏未は口を尖らせる

「そ、そんなんじゃ」

其処まで言った夏未の唇を、鬼道の唇がそっと塞いだ

優しく触れた唇がそっと離れる

それは、いつも夏未と鬼道が交わすキス

夏未が閉じた目蓋を開けようとした刹那
鼻先で鬼道が囁いた

「眠らせないぞ…?」
「ぇ?」

再び触れた鬼道の唇
だが

「…っ?」

唇を割って侵入した鬼道の舌が夏未のそれに絡みつく…

「んッ」

思わず鬼道の制服と腕を掴む夏未
その手にそっと自分の空いている方の手を重ね、そして指を絡め手を繋ぐ鬼道

それはとても優しくて、最初は驚いていた夏未も次第に落ち着きを取り戻し…鬼道の制服を掴んでいる手を緩めた

そっと唇を離し、ようやく息をついて頬を染めた夏未を見詰める鬼道

「……バカ」
「随分だな」
「だって、いきなり…」
「する前に言うのか?それもどうかと思うぞ」
「それはそう」

だけど、と言った夏未の言葉はまたかき消された

「……!…!」

肩を抱く手を解いて、優しく夏未を抱き締める
夏未も、そっと鬼道の背中に腕を回す


今までと少しだけ違うキス
けれどそれは今までよりずっと2人の距離を近くする



「す、こし…呼吸させて…」

唇を離して喘ぐように呟いた夏未を優しく抱き締めたまま…鬼道はその髪を撫でる

は、と夏未が息をする

「眠くなったらこのキスを思い出せ」

ベンチに夏未と自分の身体を委ねながら、鬼道はするりと夏未の頬を撫でた

夏未の頬が赤くなったのを見届けると、鬼道は再び...その唇を塞いだ







何度も、何度でも、君とキスをする
by確かに恋だった






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