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▼恋敵は一枚上手


「ナッツミ〜!」

踊るように飛び跳ねながら現れたロココは夏未の姿を捜す

「ねえマモル、ナツミは?」
「何だロココ、また夏未に会いに来たのか?」
「うん!ナツミがジャパンに帰っちゃったから、なかなか会えなくなっちゃったからさあ〜」
「…さっきまで鬼道と喋ってたんだけど」
「キドウ!あのゴーグルとマントの変なヤツだろ?」

眉間にシワを寄せて、胡散臭さそうな表情のロココに、円堂は苦笑いする

「鬼道はああ見えて天才ゲームメーカーなんだぞ」

近寄って来た風丸が微妙なフォローするも、ロココはふんッと顔を背け納得できない様子だ

「あんな変なヤツにナツミは渡さないよ!」
「変なヤツで悪かったな…」

ロココが振り返ると其処にはこめかみに3つ怒りマークをつけた鬼道が立って腕組みをしている

鬼道はゴーグルを外し、鳥でも射落とせそうな程鋭い視線をロココに向ける

しかしロココも負けてはいない

円堂と風丸はそんな2人からそろそろと離れていく

「ナツミを隠したな…」
「俺様が何故そんな事を?あり得んな」
「ナツミが俺に取られるのが怖いんだろ」

その台詞を聞くと、鬼道は表情を緩め、にやりとした

「ほほう、お前も認めているのだな?雷門が俺のものだと言う事を!!!!」
「だッ!誰が!」
「あら、ロココ?」

その声を耳にしたロココは子犬の様に夏未の元へ走り寄ろうとするも、全て進路を鬼道に塞がれる

「なにするんだよ!キドウ!」
「雷門の所へお前を行かせてたまるか」
「やっと本音を言ったな」
「勘違いするな、お前が行く事によって雷門のマネージャー業務に障りが出る…要するに邪魔なのだ」

鬼道とロココの攻防を遠目に見詰め、夏未が溜め息をつく

「あの2人面白いわね」

秋が話し掛けると夏未は首を振る

「面白いものですか…あれで何度目かしら」



攻防を続けていたロココと鬼道だったが、ふいに、ロココがふん…と一歩引いた

「鬼道はナツミをナツミって呼べないんだ」
「なに?」
「ライモンって」
「それは…」
「まだ名前で呼び合う仲じゃないって事だろ」
「日本人は謙虚だからな、お互いを名前で呼び合うにはそれ相応に」
ロココはニッと笑うと、勝ち誇ったように鬼道を見詰めた

「俺達は名前で呼び合ってるよ」

俺達、と言う言葉に鬼道の眉がぴくりと反応した

「お前達チーム全員がナツミ呼びだろう」
「キドウは俺のチームメイトにも負けたんだ〜」


「子供かよ!!」と咄嗟に突っ込みを入れたかった風丸だったが、鬼道の目つきがすうっ、と冷ややかなものに変わったのを見て慌てた
「アイツ何かやる気だ」と感じた風丸が、「待て」と口にした瞬間――…



「夏未」


一瞬、ざわついていたイナズマジャパンの一切の話し声が止み、再び、鬼道の凛々しい声だけがその場に響いた


「夏未、こっちに来い」


一瞬何の事か分からなかった夏未は無意識に「はい…」と小さく答えた
しかし、ハッとして顔を赤らめると慌ててバタバタと鬼道の元に走り寄り、小声で抗議する

「いきなり何よ!みんなの前で呼ばないって約束でしょ!」
「ロココが呼べと言うのでな」

しれっと言い切る鬼道に驚愕したロココだったが、矛先が自分に向けられて焦る

顔の前で両手をブンブン振り、夏未の視線から逃れようとする

ロココに言葉を発する隙も与えずに、ビシッとロココを指差す夏未

「帰りなさい、ロココ良いわね!」

それだけを言い、夏未は鬼道のフードを引っ付かんで引きずるように連れて行く

その際の勝ち誇ったような鬼道の表情を、ロココは見逃さなかった



「次は絶対負けないからな!」




「あれで気付かないんだからな」
「言うな豪炎寺…」
「あれがロココの良い所だろ」

豪炎寺、風丸、円堂が見送るロココの背中は、まだ闘志溢れる炎を背負っているのだった






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