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「#幼馴染」のBL小説を読む
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▼君の全てを知っていたい


大人なキス描写あり







はたはたとタオルが風に靡く

夏の暑い日が続く中、今日は比較的過ごしやすい方と言えるだろう


練習の合間、俺は姿の見えない雷門を捜して部室の裏手までやって来た


「此処に居たのか」
「鬼道君…」
「全部1人で?」
「そう、今終わった所よ…」

ふう、と息を吐く雷門に俺は労いの言葉を掛ける

「お疲れ」
「ありがとう…貴方は休憩?」
「ああ、今しがた皆休憩に入った所だ」
「そう」

雷門はそう答えると、風に靡くタオルを眺めた

「鬼道君の背番号って…14番よね」
「…?…ああ」
「いつもマントを着けているから、見えないけど…ふふ」

何か雷門は自分の中で想いを巡らせていて…俺はそれを窺い知る事は出来ない
少しそれが悔しい気もするが…

「それがどうかしたのか?」
「何でも無いのよ」
「気になるだろう…」

俺は部室の外壁に寄りかかって不満を漏らす
雷門は笑って、暫く黙った後口を開いた

「…コトアールに居た頃…こうやって皆のユニフォームを洗濯したわ」
「ああ…」
「その度に貴方の背番号を思い出していたのよ」
「……」

その言葉で、俺はある事を思い出した




リトルギガント戦に勝ち優勝を決めた時…円堂に連れられてロココがやって来た

「鬼道〜ロココが話したいって」
「俺と?」
「うん、背番号14のヤツは誰かって」
「俺だが」
「そう…君が、…そうか」

ロココは1人納得して俺の顔を見ている

「それ、外してみてくれない」
「ゴーグル?」

ロココの要求に応じてゴーグルを外す

「……ありがとう」
「…?…ああ」

握手を求められて、それに応じるとロココは微かに寂しそうな笑みを残し俺の前から去って行った



あの時は何が何だか分からなかったが…
もしかしたら今雷門が言った事と、何か関係していたのかも知れない…

だとすると、アイツも…


「あの時はイナズマジャパンを辞めたばかりの時で…貴方に」

雷門が言葉を切った

「何だ?」

俺が尋ねても、雷門は頬を赤くして俯いている

「何でも無いのよ」

ひらひらとタオルが靡く
その合間をぬって、雷門に近付く

「聞かせてくれないか」

俺を思い出してくれたその時、どんな感情だったんだ
どんな表情だったんだ

きっとアイツはそれを知っている

それは、…許せない

「夏未」

手を伸ばしてその身体を引き寄せる
もう片方の手で頬に触れる


つまらない感情だ
だがどうしようもない
俺の知らないお前を誰かが知っているなど、耐えられなくて、許せない


触れた唇を割ると、逃れようと雷門が身じろぎする
それを封じてキスを続けると、ついに雷門は苦しそうに喘いだ

「……言わないと、」

俺がまた顔を近付けると、雷門は慌てて言葉を繋げた
その唇が濡れて、いつもより赤く光っている

「あ、会いたくて…たまらなかったの…貴方に」
「……そうか」

俺はどうやら満足そうな顔をしたらしい
無理矢理俺から離れた雷門が、こちらを睨みながら顔を赤くした

「こんな所で…誰かに見られたら」
「構わん」
「もう…っ」

ぷい、と顔を逸らす雷門が可愛くてたまらない
どうしようも無くお前が好きなんだ
言葉にはせずに、何度も心でそう言う

「そろそろ退散しないとな」
「当たり前よ!」

怒り心頭の雷門が面白くて可愛くて、俺は笑ってしまう

「何で笑うのよ…悔しいわ」
「雷門」
「何よ」
「大好きだ」
「…っ!」

口をパクパクさせて、雷門は俺を見詰める

「し、知らないわ!バカ!」
「酷い言いようだ…」
「貴方が悪いのよ!」
「そうかな」

ニヤリとした俺を、信じられない、と言う顔で見た雷門は洗濯カゴをひっつかんでバタバタと走って行ってしまった

「怒らせたか…」

ふ、と笑い俺はマントを翻しグラウンドへと戻る

損ねた機嫌をどうやって直そうか、そう考えるのもまた楽しくて…俺は独り笑った







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