sweet honey drop
路上で困っている少年が放っておけなくて話しかけた。唯それだけ。少し驚いた様子でこちらを見た蜂蜜色の瞳が印象的だった。
カラハ・シャールのクエスト摂関所へ完了報告をし終えたルドガー達は部屋を取っている宿に帰っていた。
今日はアルヴィン、レイア、エリーゼとで依頼をこなし、後は報告するだけといったところで誰が言い出したか市場を少し見ていこうという話しになった。
夕刻にも関わらず賑やかな市場をルドガーはエルと共に物色していると、その一角で瓶詰めにされた飴が売られている。
「あ、ねえ!あの飴、ジュードの目の色みたい!」
興味津々なエルにルドガーは手を引かれ店の前に立つと、きらきらとした目で飴を見ているエルに話しかけた。
「その飴、欲しいのか?」
「べ、べつに!ほしくないし!」
そう言いながらもやはり飴が気になるのだろう、エルの視線は飴に向いている。値札を見るとそう高い値段ではない。ルドガーは飴の詰まった瓶を1つ手に取ると代金を支払い、エルに手渡した。
「エル欲しいなんていってないけど…ありがと」
相変わらず素直じゃないが、やはり欲しかったのか嬉しそうだ。
3人と合流するために足を進めようとすると、エルが何か思いついたようにこちらを見上げてくる。
「ルドガー、この飴もう1つ買ってもいい?」
「そこまで高くもないからな…どうしてもう1つ欲しいんだ?」
「えっとね、ジュードへのお土産!いっつもケンキューを頑張ってるゴホービなんだから!それに、疲れたときは甘いの食べたらいいっていうし!」
えっへんと胸を張るエルにルドガーは苦笑いを浮かべつつ帽子越しに頭を撫でると、瓶詰めの飴をもう1つ手に取った。それを見たエルは満足そうな笑みを浮かべていた。
「エル、その飴どうしたんですか?」
3人と合流し、クエスト摂関所に向かっている途中でエリーゼがエルに尋ねた。
「ルドガーが買ってくれたんだよ!こっちがエルので、こっちがジュードにお土産!」
「お土産、ですか…?」
「うん!あ、でもジュード喜んでくれるかなあ…」
「大丈夫ですよ!きっとジュードは喜んでくれます」
そんな会話を微笑ましく思っているとクエスト摂関所に着くと報告を足早に済ませ宿へ戻ると、ルドガーは一先ず1日汚れを落としてしまおうとシャワーを浴びる事にした。
カラハ・シャールからトリグラフへ戻ると、エルは早くお土産を渡したくてそわそわとしていた。一度家に戻ってからヘリオボーグへ向かおうと告げると元気の良い返事が返ってきた。
家に向かっている途中でGHSが鳴り、ポケットから取り出して画面を見る。ジュードからだ。
『ルドガー、お疲れ様。さっき戻って来たってレイアからメールが来たからかけてみたんだけど…よかったかな?』
「大丈夫だ。ジュードもお疲れ様。」
『ふふ、ありがとう。』
そう言って笑う声は柔らかく、穏やかだ。軽く言葉を交わしていると
「エルもジュードとお話ししたい!」
と言われてGHSを渡した。エルは数日ぶりにジュードと話せて嬉しいのだろう。暫くの間、絶え間なく話していた。お土産がある事も伝えると満足したのかGHSが返ってくる。
「すまない、すっかり長電話になったな…」
『謝らないで?僕もエルのお話し聞くの楽しかったから』
「あぁ……その、ありがとな」
『うん、どういたしまして。そうだ、ルドガー』
「なんだ?」
ふと何か思い出したのか名前を呼ばれた。何だろうかと思いながら言葉の続きに耳を傾ける。
『今日はもう切り上げようと思ってるんだけど…ルドガーの家に行っても良いかな?』
「勿論!ジュードが来てくれるとエルも喜ぶし、なにより俺が嬉しいからな」
『そう言って貰えて嬉しいよ』
ありがとう、という声は照れている様だった。