Novel
07
突然押し付けられたそれを、驚いた拍子に受け取ってしまった。
可愛くラッピングされた小さな紙袋。それが何かなんて分かりきっていて。
「他の奴の物なんて…いらねーよ…。」
なんて、少し自嘲気味に笑えばふと紙袋に貼られた手紙が目に入った。
ラブレター付きかよ、とため息をつく。てかなんでこれを俺に渡したんだ。
少し罪悪感を感じつつ、その手紙を開いてみる。結局、あいつの好きな奴は誰だったのだろうか。
「っ…。」
愕然とした。
「なん、だよそれ。…ほんと、ありえねー。」
手紙に書かれていた文字を読み上げ、くしゃりと前髪を掴む。
最後まで、俺は情けない男だなあ…信じらんねーよ。
俺は走り出した。どこに行くかなんてそんなのは決まっている。
「…馬鹿野郎。俺も、」
"好きだ"
雪道のせいで走りづらい。冷たい雪がブーツの中に入ってくる。
でもそんなことはどうでもよかった。ただひたすらあいつの姿を探して走って。
早く、早く伝えたくて、抱きしめたくて、傍にいてやりたくて。
気がつけば既に寮まであと数分というところまで来ていた。
「苗字!!!」
見つけた。
「福井君…?」
見つけたその背中に少し離れたところから声をかける。ゆっくり振り向いた彼女は泣いていた。
馬鹿だ。俺は大馬鹿者だ。なんで気づいてやれなかったんだ。ずっと彼女を泣かせていたのはほかの誰でもない、俺だったんだ。
「俺も、好きだ。」
苗字のもとへ駆け寄り抱きしめる。俺の言葉は、彼女の胸へと溶けていった。