Novel
05

苗字が泣いていた。それがつい一昨日のこと。
運が良かったのか悪かったのかその場に居合わせてしまった俺。
とめどなく流れる彼女の涙に何もしてあげられないもどかしさを感じる。
しかし事情を聞く勇気もなく彼女が泣き止むまで傍にいてやることしかできなくて。
ああ、なんて情けない男なのだろうと自分を悔やんだ。

「は?…失恋?誰が?」
「苗字さん。」

そんな時ふいに話題になったそれは苗字が失恋したらしいという話だった。
いつ?と聞けば友人に一昨日と返された。
まさに彼女が泣いていた日ではないか。つまり、あの涙の理由はそれだったわけだ。

「へー。」
「まあ俺たちには関係ねーしな。」

嘘だ。興味がないというような態度をとってはいるが内心は穏やかとは言えない。
誰だよ。なんで振ってんだ。なんで泣かせてんだ。俺だったら絶対に泣かせたりしないのに。
そんなことばかりを考えてしまう。もう一度言おう。俺は情けない男だ。

「帰るか。」

そう言って今まで腰を下ろしていた椅子から立ち上がる。
ふと目に入ったカレンダーにはクラスの女子達がつけたらしい印が一つ。
14日の文字が可愛くハートで囲まれていた。

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