Novel
06

ついに、この日が来てしまった。朝から憂鬱な気分。それでも学校はいつもどおりあるわけで。私は仕方なくいつものようにコートを来て学校へと続く雪道を歩く。
学校に到着すればやはり、と言えるのかそこらじゅうで女の子達が奮闘しているようだった。本命なのか義理なのかはては友チョコなのか。とにかく思いきり2月14日という今日を満喫している。


そんな周りの様子を視界にとらえ羨ましいなあ…なんて考えていればあっという間に放課後がやってきた。
そっと自分の鞄を見つめはあと息をつく。

「チョコ…どーしよう。」

せっかく作ったのだからと思い一応のため持ってきた福井君に渡すためのチョコレート。これはどうやら昨年までと同様に寮へと持ち帰るはめになりそうだ。
これじゃ昨年までと何も変わらない。いや、少し違うところもあるのだが。
違う、というのはもちろん既に失恋済み、ということで。

「…もうやだ。」

一度は押さえ込んだ涙が再び溢れてくる。
しかし、こんなところで泣いていても意味がない。
悩みに悩んだ結果、下駄箱まで足を運んだ。が、その先に踏み出せない。

「い、いれるだけ…いれるだけ!」

呪文のように繰り返しては手を伸ばす。しかし、あと少しというとこで止めてしまう。
ああ、もう。本当に情けない!いい加減に覚悟を決めたらいいのに…!
何が悪いんだろうか。下駄箱にチョコを入れるなんてたった一瞬のことなのに。

「まあ、原因なんかわかってるけどね…。」

手にしたチョコレートを見ればそこには福井くんへと書かれた紙が貼ってあって。
その中には小さく"好きです"と書かれているはず。
失恋したとはいえ想いくらい伝えてもバチはあたらないだろう。
でもこの一言の短いメッセージのおかげで一歩踏み出せないのも事実で。

「あああ!やっぱダメ!無理だよ!!」
「うおっびっくりした!」
「あ、ごめんなさ…っ!!!!」

大丈夫か?と心配そうに覗き込まれた。その瞬間私の心臓は止まるんではないかというくらいに跳ね上がった。
だって、声をかけてきたのは今現在チョコをいれようとしていた下駄箱の持ち主だったのだから。

「ふ、ふく、ふく…。」
「おお、またか。落ち着け…大丈夫ゆっくりな?」
「ご、ごめん…。」

ついこの間スーパーで会ったときとまったく同じだ。突然現れる福井君と慌てる私。
恥ずかしくて恥ずかしくて慌てて顔を伏せる。そっとチョコレートを胸に抱くように隠した。

「…お前、それ誰にやんの?」
「うえっ!!」

声が裏返ってしまった。なんで、どうして。少し隠すのが遅かったのか。
福井君は私の持っている物にあっさり気がついてしまった。

「え、えと…その…えっと…。」

どうしよう。まさか福井君にです、なんて恥ずかしくて言えないし…なんて困っていたら彼が少し寂しそうに笑った。
初めて見た彼の表情に私は少し驚いた。

「いや、悪い。俺には関係ないもんな。」

ごめん、そう言って下駄箱から靴を取り出し履き替える福井君。
行っちゃう。これが、最後のチャンスなのに。何もできないなんて…そんなのやっぱり悔しいよ…。

「ふ、くい、君!」
「あ?」

彼が振り返った瞬間、胸に抱えていたものを押し付ける。一瞬驚いた彼がそれを受けっとた瞬間、私は既に走り出していた。






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