Novel
03

「よーお前らの元気にやってるかー。」
「福井先輩、部活に顔出すなんて久しぶりですね。」
「久々に身体動かしたくなったんだよ。」

そう言って腕まくりをすれば氷室がお相手しますよ?とほくそ笑む。
相変わらずこいつのイケメンオーラは健在のようで腹が立つ。
少しでいいからそのオーラを分けて欲しい。なんて、先日そんな話をしたら「先輩も十分モテるじゃないですか。」と返された。
確かに。自分で言うのもおかしいが俺もそれなりにはモテる。しかし、結局そんなものはどうだっていい。
好きな子にモテなければ意味がない。

「で、進展は?」
「あ?」

なんでも知っている、とでも言うような顔でふっと笑う後輩にむっとしかめっ面をすればすべて理解したらしくため息をつかれた。正直ため息をつきたいのはこっちの方だ。

「なし、ですか?もうすぐ卒業ですよ?それでいいんですか。」
「いいわけねーだろ!いいわけねーけど…。」
「?」

俺は昨日のことを思い出しふうと息をついた。スーパーで見つけた彼女の後ろ姿。
あまりのことに驚いたのだがそりゃもうこれはチャンスだと思い声をかけた、まではよかったのだが。

「なんか、好きな奴いるらしい…。」
「oh…。」

無駄に英語使いやがって。そう思ったがあえて口にはしないでおこう。今はそんな気分でもないしな。
声をかけた瞬間に彼女が口にしたバレンタインデーという単語。それはつまり、そーゆーことだろう。

「あーあ、俺はこんなにあいつのこと好きなのになあ…。」

運がいいことに彼女とは三年間同じクラスだった。初めて会ったのは入学式で、迷子になっていた彼女を体育館まで案内してやったのがきっかけだった。正直、一目惚れだったと思う。

それからずっと、それなりにアタックはしてきたつもりだった。それがどうだ。結局彼女は俺の想いに気づくこともないまま卒業式がただただ間近に迫っている。
ほんとに、泣きたくなってくるぜ。

「いっそ告白しちまうか…。」

これはとっととフられた方が楽なんじゃねーかとか、そんなことさえ考えてしまう。ああ、もう。そんな自分に嫌気がする。
こんなに好きなのに。気づいてもらえないからって諦めんのかよ。それはやはり、かなりダサい。

「…とにかく、今日は付き合いますよ。好きなだけ体を動かして行ってください。」
「おー。」

むしゃくしゃする。ちぐはぐした心。ああ、恋ってやつはめんどくせえ。
俺はそんな感情を抱きながらバスケットボールを見つめ、すっと構えるとパッとシュートを放つ。
無残にもそれはガンッと音をたてゴールを外した―。

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