Novel
02

「今年も渡せないんだろうなあ…。」

たくさんのチョコレートの山を見つめ私はため息をついた。
お母さんに頼まれ買い物に来ていた私はスーパーで目についたバレンタインデーというピンク色の文字に頭を抱えていた。
もう気がつけば2月の5日。バレンタインデーまであと10日をきっていた。
去年も一昨年も、彼に恋をしてから毎年渡そうと手作りしたチョコは結局どちらも渡せずに家に持ち帰ってしまった。普段から自信がなく弱気なこの性格が悪いのだがそれに拍車をかける彼の人気。
毎年帰りにはたくさんのチョコレートを抱えて帰って行く彼を私はただ遠くから見ていることしかできなかった。

「でも、やっぱり今年こそは渡したいよね…だって、」

今年がラストチャンスなのだから。
三年生の冬。来年は残されていない。
泣いても笑ってもあと一月もすれば卒業式が待っている。それはつまり福井君との別れが待ち受けているわけで。
ああ、考えただけで涙が出そうだ。

「うう…。」
「苗字?お前こんなとこに突っ立って何してんだ?」
「いや、もうすぐバレンタインデーだなあって……………………え!?」
「よっ!」
「ふ、ふ、ふ、ふくっ、ふくっふふふくいく、くん!!」
「お、落ち着けよ。」

嘘。なんで。どうして。突然のことについ先日髪留めを拾ってもらった時と同じように頭が真っ白になってしまった。
涙が出て来そうだ、なんでぐすぐす泣きべそをかいていた時に突然現れた想い人。これで驚かないなんで人じゃない。
それよりどうしてこんなとこに福井君がいるの!?

「あー悪い。驚かせちまったみてーで。」
「う、ううん!だ、大丈夫、だよ!え、と福井君はなんでここに?」
「あーちょっと親に醤油買ってこいって言われて。お前は?」
「私もお母さんに買い物頼まれて…。」
「なんだ一緒か。」

お揃いかーなんて、ふっと笑う福井君。
ああ、なんで福井君はそんなことをさらっと言っちゃうんだろう。もう心臓がらうるさくてうるさくて仕方が無い。
彼に聞こえてしまうのではないかというくらいにうるさい心臓をなんとか落ち着かせようとするも彼とお話できることが嬉しくて嬉しくて。
結局最後まで心臓はうるさいままだった。

「あ、そろそろ行かねーとどやされるな。じゃ、また明日な。」
「うん、また…明日。」

ひらひらと手を降る彼に私も精一杯手を振り返す。と、ふと思い出したかのようにあ、と声をもらした。

「バレンタインデー。頑張れよ?」
「え。」

じゃな!と再び手を振り去って行った福井君。
最後の最後にとんでもない爆弾を投げつけて。ああ、ほんとに。

「ふ、福井君って…罪作りな男…!」

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