昴『雨降りそうだな…』




バスに揺られながら空を見上げれば雲行きが怪しかった

テスト期間中に何をしているのかと思ったが今はテストなんてどーでもいい

頭の中から消し去った



しばらくバスに揺られていると目的地に到着したらしくバスが止まった

オレはお金を払ってからバスを降り鞄を持ちかえて歩き出した

途中、花屋で花を買った

司が好きだった鈴蘭

それを持って司がいる寺に向かった

久し振りに来たな

いつぶりだろう

半年以上来てないのは確実だ





長い階段を登り境内に入ると散った桜でピンク色の絨毯ができていた

そんな境内をずかずかと歩き、墓地に入る

しばらく歩き、墓地の真ん中にある大きなイチョウの木の前で立ち止まった

その木の真下にある墓を見ると真新しい花が飾られていた

オレの前に誰かが来たらしい

とにかく、オレは鞄を下ろし買ったばかりの鈴蘭を墓に飾った




昴『司、久し振り』




墓に向かって呟いた言葉は虚しくも吹きつける風に紛れて消えていく

しゃがみこみ司が眠っている墓に手を合わせた

どのくらいそうしていたのだろうか

数秒だった気もすれば数分にも感じた




昴『司、オレ未だにお前が隣にいる気がする。本当、情けないよな。でも、ダメなんだ。いつまでたっても慣れない。慣れって怖いな』




話しかけても返事はない

当たり前だ。

司は死んでしまったのだから

去年の、あの不慮の事故で―。




そういえば、あの日も今日のように雨が降りそうな天気だったなぁ

そう思いふと空を見上げると、冷たいものがオレの頬に流れた

雨だ







いや、雨だけじゃない

オレは、泣いているのか―?




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