昴『……』

白石「ここ、ちゃうで」

昴『どこから!?』

白石「最初からや」




四天宝寺に入学して早1カ月半

そんな5月の後半に差し掛かった頃

オレは白石に勉強を教えてもらっていた

何故、勉強嫌いなオレが勉強をしているのかというとテストが近いからである

当たり前と言えば当たり前なのだがこの時期はどこの中学校にも中間テストというものがあり、それは四天宝寺でも同じ

テスト期間に入り部活は停止期間中だった

そんな中、オレは困り果てていた





昴『は、なんで?』

白石「式がちゃうやろ!?」

昴『ん?』

白石「ちゃんと問題見てへんな…?」




まったく勉強ができないオレは問題を読むのすら難しい

とにかく、字を読むのが嫌なのだ

適当に読んで適当に解く

それが今までのオレのやり方

しかし、中学校にもなると高校進学のことを考えて少しはいい点を取っておいた方がいいと勉強を始めたのだが…

身についてしまった癖はなかなかなおらないらしく、つい適当に問題文を読んでしまう






白石「ちゃんと読まなあかんやろ!」

昴『つい…』

白石「…昴、勉強やめよか」

昴『なんで!?』

白石「自分は本読んだ方がええ!!とにかく字を読むことを覚えないかぎりいつまでたっても問題文読まへんやろ!!」

昴『えぇ〜…。』




* * *




謙也「…昴、熱でもあるんか!?」

昴『なんでだこの野郎』

謙也「痛゙っΣ」




お昼休み、ひょっこり1組に顔を出しに来た謙也の頭に持っていた本を投げつける

すると、今度は後ろから白石に殴られた





白石「本を投げたらあかんやろ!」

謙也「いたた…何すんねん!?」

昴『謙也が失礼なこと言ったからだろ!!』




そりゃ、たしかにオレが本なんか読んでたら驚くだろうよ!!

なんてったってオレが一番驚いてるからな!!




白石「こいつ問題文読もうとせーへんから、まずは本読ませて字を読むこと覚えさせてんねん」

謙也「そっから!?そっからなん!?」

昴『うるせー。字なんか読んでどうすんだよ。だいたい司も毎日毎日読んでるけど面白くなんか―』

白石「司?」

昴『あっ…いや、』

謙也「司ってだれや?」





しまった…!

そう気付いた時にはもう遅い

つい、毎日のように本を読んでいた司のことを思い出してしまったからか、名前が口から出てしまった




昴『や、その…あ、ああ!従兄!従兄の名前だよ!!』

白石「へー。従兄って確か高校生やったな?」

昴『お、おう。今年高1』

謙也「…昴、なんでどもってるんや」

昴『…悪い。オレ今日昼1人で食う。白石、謙也達と食べてくんねーか?』

白石「昴?」

謙也「え、オレもう食い終わってんねんけど!?」




白石の返事を聞かず、オレは謙也から受け取った本と弁当を持って教室を飛び出した

なんて嘘をついたのだろう

司は従兄なんかじゃない

もっと、もっと、近くて、身近な存在

オレの―…


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