先生「いいかー()をとる時は―…」




お昼も食べ終わった5時間目

オレのクラスは数学の授業をしていた

先生が式の説明をしていて、生徒達はそれを聞きながらノートをとっている

もちろん、それは白石も同じで忙しそうに手を動かしている

そんな白石達に対して、オレは何もしていない

ただ、ずっと時計を見続けていた





昴『(2時…始まる)』




どうしてオレがこんなにも時計を気にしているのかというと、




昴『(あ、楓の手術始まった…)』




そう、今日は妹である楓が手術を受ける日だった

話によると手術は2時前から始まるらしいからきっと、ちょうど始まった頃だろう

もちろん、妹のことを心配しない兄はいないわけで、

オレは授業なんかそっちのけで成功することをただ祈るばかりだった




先生「おーい昴!ノート全然写してないやん。ちゃんと授業は聞きぃー」

昴『今そんなことしてる暇ないんすよ!』

先生「そーか、ならしゃーない…って言うとでも思ってるんか!!」




先生、本当に頼むから

今は授業になんか集中してらんないんだよ




先生「ノートとらんとあとで困るで!」

昴『ノートはあとで白石に見せてもらう!!』

白石「俺かΣ」




* * *




昴『……』



謙也「昴ー?さっきからなんで携帯睨んでるん?」

石田「はよ着替えないと部活はじまってまうで?」




昴『ん…分かってる』




ユウジ「って着替えようとしてないやん!?」

小春「もう時間ないで!」




昴『……』




全員「「……」」




放課後の部室、今度は時計ではなく携帯を睨み続けるオレ

そんなオレにテニス部のメンバーが話しかけてくるが生返事しか返すことができなかった




謙也「白石、昴の奴なんかあったん?」

白石「俺が聞きたいわ。5時間目あたりからずーとあんな調子やねん』




そんな会話を聞きながらもオレの視線は携帯から離れない

しかし、一度立ち上がり時計に視線を移した

短い針は4を指している




昴『…はぁ』




いつまで待っても鳴らない携帯

しかし、このまま待ってるわけにもいかずオレはやっと着替え始めた

白石達のホッとしたようなため息が聞こえたが、ため息をつきたいのはこっちだ




昴『(連絡来ない…手術長引いてるのか?失敗、なんてことねーよな?)』




ダメだ。考えれば考えるほど不安になっていく





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