それからのことは正直言って覚えていない。 ただ、気づいたら病院にいて母さんが泣いていた。 母さんの涙をオレは初めて見た気がする。 親父は顔を伏せていた。 昴『…仁王、司は?』 仁王「……」 応えは返ってこなかった。 昴『わけっわかんねー…』 数時間前まで一緒にいたのに、笑ってたのに…。 今、目の前で目を閉じている司が、もう笑ってくれないなんて―。 昴『そんなのっ…信じられるかよ…!』 ―楓が起きたらなんて言えばいいんだよ。 ―妹泣かす気か? ―寝てねーでなんか言えよ! ―だいたい、オレこれからダブルス誰とすればいいんだよっ! ―まだ、やりたいこといっぱいあるんだろ…。 ―なぁ、司!! 仁王「…昴!もう、司は戻ってこないんじゃ!諦めんしゃい…。」 昴『っ…!』 仁王の一言で、我慢していたものが溢れ出した。 ああ、司とは、もうテニスができないんだ―。 25.冷たい君は、 (もう二度と、オレ達に笑顔を向けてはくれない―。) ≪ | ≫ [Back] |