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2014 / 06 / 01 電球が切れて


部屋を灰色の空気が侵食する。透明だった空気が色を持つようになる。不思議だ。服を脱いで風を体で感じる。馬鹿らしいと思いながらも衣服が覆わなくなった皮膚が元気よく呼吸をしているのがわかって憂鬱を吹き飛ばせるような気がしてくる。

「私って最低かしら?」
「?」
「ねえ」
「最低だと思うなら変わればいいだろう」

乾いた言葉が耳をかすめる。言葉を拾わずに振り払おうと思っていたのに私はしっかり咀嚼する。脳が刺激される。わかっているはずなのに言い訳を探す。どんな言い訳もきっと効力を持たないと知りながら無駄なことを続けようとしてしまう。

「だから・・・」
「へえ、死にたいとでも言おうと思った?」
「・・・・」

なんでもお見通しのようだ。焦りを隠せない私に気づいたのか彼は苦笑いを浮かべる。いつも確信を付くようなことしか言わないから弱さは一気に砕け散る。いい意味でも悪い意味でも私は崩れ去っていく。阿呆みたいだ。骨折り損のくたびれ儲けか。

「死ねないからそうやって言うんだろ。本当に行き詰ったら人は何も言わずに死ぬよ」
「いや、あの・・・」

「もう電球切れてんのかよ。持ち悪いな」

下を向く私を無視するように天井を見て呟く。彼がそう言うと余計に部屋が暗く感じる。

「そろそろ服着ろよ。俺は帰る。電球は自分で付け替えれるよな。出来ないなら手伝うから。」

少しの間、私も天井を見た。ドアの閉まる音を耳が吸い込んで彼がこの部屋からいなくなったことを脳に伝えた。部屋を明るくしたところで何か変わるだろうか。たったひとつの電球で変わるだろうか。彼はきっとまた来てくれる。そして上の空の私に決まり文句のように「死にたいの?」と聞くのかもしれない。





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