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2014 / 05 / 30 見下ろす世界


高い高いビルの上、息を潜めて夜を待つ。誰もいない世界に取り残されごっこを始める。人々が眠るのを待って私は死にたがる。死ねないから夜に頼って死んだ振りをする。長く続く沈黙が私を安堵させる。

「ワン・トゥー・スリー」

声が湿った空気に吸い込まれて消える。生きていた。私は死んだ振りが下手なんだなとつぐづく思う。世界に振り回されたと嘆いて自分の弱さを覆おうとする。

「もしも…」
「私が死んだらどうする?って」
受話器の向こう側の声が私の言葉に重ねてきた。
「なんで…?」
「まだ死んじゃだめだよ」
「わかってる」
「…それならいいけど」
時が止まる。沈黙が始まる。湿った風が更に水分を求めているのか私の頬を撫でた。見上げた空、流れ星が希望を一瞬呼んで跡形もなく消えた。



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