ブログ | ナノ


2015 / 05 / 26 感情と事実の隙間



「私殺される気がする」
ただ真っすぐに私を見つめて春野雅は言った。そこに恐怖はなく「明日、遊園地行くね」みたいなそんな報告のように感じた。雅は私の幼馴染で背は小さく誰とでもスグ仲良くなるような陽気な人懐っこい子だ。
「殺されるってどうしたの?」
「嘘をつきすぎたみたいなの」
「それと殺されることに何の関係があるの」
「私は彼らを求めたわけじゃない。でもね、純粋に楽しかったの。彼らといる空間が」
「ねえ落ち着いて私が聞きたかったのは・・・」
ここで自分が動揺したら話が進まないと思いながらも私の手は汗で濡れていた。じんわりと溢れてくる汗が気持ち悪い。
「檜山くんと高村くんと・・・三志多さん・・・」
「愛嬌があるのは良いことだけれど、また相手の考えに乗っかってなにかやらかしたの?」
「騙してるつもりはなかったの。みんな私を都合よく扱っていた。大切に思ってるのかどうかではなくて私の使い勝手について考えてしまっていたの」
「・・・・」
彼女は人と違った感性を持っていて、言葉はありきたりでも言っていることをストレートに受け取ると混乱する。知った意味を繋げているだけなのにそこにあるのは異次元なのだ。
「私はモノで彼らが特別な感情なく、その日の埋め合わせや日常をスムーズに進めるためのパーツでしかないと思っていたの」
「・・・・だから悪くないと?」
「人間って難しいのね」
目をそらすと雅はため息をついた。私には全く理解できなかった。彼女の中にある感情の形はどういう風に人と重なっているのだろう。人のどこに感情が存在しそれを動かしているんだろう。彼女の中で感情と人は上手く繋がっていないように見えた。

それから数ヵ月後、彼女は死んだ。自殺らしかった。
長年一緒にいたのに家族は彼女の死を私に深く教えてくれなかった。檜山くんも高村くんも三志多さんも私は知らない。名前しか聞いたことがない。雅とテレビと見たときに彼女が芸能人を指差して、三志多さんは高村さんは誰々に似てるって言っていたっけ。そんなことを思いながら雅の命日に彼女が大好きな勿忘草を持ってお墓参りにいく。





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -