ブログ | ナノ


2015 / 02 / 03 透明な壁


透明なガラスに映る淡い私の姿を横目にショーウィンドウの前を歩いていた。街は冬から春の装いに変わろうとしていた。私の心にはこれから冬が来るのではないかと思わせるような冷たさしかなかった。重たい足をゆっくりと進めながら昔のことを思い出していた。失ったものがなんだったのかに気づいてからやっと半年が経つ。当たり前の生活の中に組み込まれていたそれが私には欠如していたことに長い間気づかなかった。自分がとても弱く醜い人間だと思っていたからなのかもしれない。人と関わることで起こる疑心暗鬼やちょっとした感情の揺れが恐怖でしかなかった。多少卑下されたとしても私が誰かにとっての空気でいられる時間がとても心地よかった。私は大事に育てられてきた。少し優しすぎるほどだった。でもそれは私への愛情とともに自己愛にも似たものだったのかもしれない。誰かを愛そうと思うことで自己肯定する。自分が誰かを愛しそれが受け入れられることを幸福とする。思い通りに行かないと受け入れない相手を非難する。自分の愛は正当で受けられないなんておかしいと思っているのかもしれない。言葉がいくつかの道に透明な壁をはって通れないようにすることがあった。向こう側は見えるけれど時々そのガラスのような壁に映る自分が誰かの思い描くものではないことが怖くなって壊すことが出来ずに尻込みした。何が正しいのかわからなくなった。幼い頃に作られたレールを崩せずにいる自分が情けなくなる。誰の人生でもないと思っている。けれど、やはり昔に親から言われたお前のために〜したのにお前は〜しないとか親の幸福論の中に組み込まれた人生の形から抜け出せずにいる。私を大事に思う家族の思いが重くて痛い。



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -