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2014 / 09 / 21 それは容易く壊れるのに頑丈に見える外壁


明け方と夕暮れ時に感じる何とも言えない虚無感。彼は休みの日にいつも忙しなく車が行き交う道路がよく見えるカフェの窓際の席にいた。誰と話すこともなくただ行き交う車を眺めながら日が暮れるまで過ごした。自分の借りている部屋のベランダからも道路はよく見えるのだが彼はこのカフェから見える道路がどうしようもなく好きだった。
別に事故現場をリアルタイムで見てみたいとかそういうわけでもないがここは見晴らしが良いのによく事故が起こる。死亡事故は少ないものの自転車と車の接触や幼い子供が道路に飛び出して轢かれかけるのもよくあることだった。

ピーだのプーだの車の雑音と人の声が混ざってガラスの向こう側では世界が回っていた。彼ももちろんこの世界の住人であるしこの店から出ればその音楽隊の一員となる。
最初に注文したホットケーキが十分に冷めて味気なってきた。と、ショートケーキが運ばれてきた。ウエイトレスは「あ、ご注文の品は・・・」と彼とショートケーキを交互に見たあとアタフタしながら言う。
「ホットコーヒーもういっぱいもらえるかな?」
困り顔のウエイトレスをよそに彼はコーヒーの銘柄を指差しながら言った。

「は、はい。かしこまりました。ホットコーヒーですね」
頑丈に見えるガラスの向こう側、どう思おうと時間は流れていく。そして声も埋もれる。ウエイトレスがショートケーキと彼を見て戸惑うように他人の先入観に時々ため息をつきたくなったりそのイメージに潰されて一瞬自分の感覚を殺したくもなる。さっきまで飲んでいたコーヒーの苦味がショートケーキの甘さを引き立てた。彼は冷め切ったコーヒーを飲みながら二杯目を待っていた。





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