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2014 / 08 / 28 氷のように消えたよ


夏が来て日差しを更に暑いと感じるようになった。夏という言葉が私を圧倒していた。嫌いではなかったがとても好きというわけでもなかった。けれど誰もが暑さを嫌いながらも夏の訪れを待ち構えていたかのように騒ぎ出す。蝉に負けず劣らず人も夏をかき回す。

鮮やかなかき氷と夜に咲く火の花。薄煙の舞う海上を誰もが見上げた。爆音のような音が周囲に木霊し心音と重なる。私は耳を塞ぐ。耳を塞いでも爆音はどこからか入り込んでくる。酸素を欲しがる身体は空気とともに音までも咀嚼する。言葉以外を遮断することはやめようと思っていたのに気づいたら声と重なる音までもを排除しようとしていた。記憶を起こす色を欲しながらもそれと同じくある言葉を音をどうしても愛せなかった。いや愛すことを怖がっていた。水に入ると淡く揺れる色に私も溶けたかった。言葉は形をなさなかったし、音も譜線に起こせても耳に入れるためには目に見えないものにする必要があった。
永遠に失われないものを求めていたわけではない。色も音も言葉も永遠だった。一度言葉になったものは生き続けた。忘れられない限りそこにあった。溶けて水になった氷も一度氷という言葉に変換されれば氷だった事実は消せない。私も赤子という大雑把な呼び方とともに個人を識別するための名をもらった。言葉にすることでそれは事実になった。言葉にできないことは妖のようなものだった。
夏という色濃く淡い季節の中で私はくだらないことばかりに溺れ死にかけた。いや、死のうとしていた。我に返って自分が阿呆だと思ったよ。少し前まであった考えが氷のように溶けて気づいたら私は常温に戻っていた。気付いたら夏が終わろうとしていた。



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