2014 / 05 / 01 隙間職人の憂鬱
道に迷おうとしてた。誰からも探されない旅に出たいと思った。透明人間になれたら私は遠くに行こう。誰も私を知らない世界を歩こう。透明人間なら誰も私を知ることができないんだ。
気づいたら笑ってた。嬉しくも楽しくもないというか自分の中でそういう感情を確認できなかったけれど笑っていた。無意識に体がこの状況を楽しんでいたのかもしれない。
「阿呆だよな」
独り言が狭い部屋で木霊する。少し恥ずかしいなと口にしたあと思ったけれど誰にも聞こえてないことを確認して安堵した。狭い部屋の天井が高く感じるのは安心しているからなのかもしれない。恐怖を忘れられる瞬間が眠りだからだ。まあそんな恐怖を感じるのが心地よくて太陽が顔出すまで待っていることもあるけれど。薄明るくなる外を眺めながら朝を迎える日もあるけれど。
狭さを探し、広さを追求する。
私はずっと誰からも見えないところから世界を見たいと思っていた。そんな場所を作ることは限りなく不可能に近いかもしれないけれど作れたらいいと可能性にかけようとしていた。今日も夜に溺れる。