君の泣いている声が聞こえた。 僕は箱を開けることを拒んでいた。 風が吹いて カーテンが不規則に揺れていた 「僕が愛していると言ったら君はどうする」 「泣くに決まってるでしょう」 「え?どうして」 「全然嬉しくないから」 「君って面白いな」 「じゃあ、私がもし愛してると言ったらどうする」 「抱き締めてずっと離さない」 「ふふ」 「なんて言うと思う?言うはずないだろ」 「やっぱり?そうよね」 会話が途切れた頃、君は僕の隣で小さな寝息を立てて眠っていた。 幸せなんてわからない。 愛してるということの意味を考えるのは飽きてしまった。 でも、君と居るのが楽しいのは確かだった 結局、僕は箱を開くことが出来なかった。 残っているのは時間を吹き込んだビデオカメラと それをこれから封じ込めるためのDVDと少しばかりの勇気だった あの頃は狭いように感じていた部屋がとても広く感じた いつも優しく揺れていたカーテンまでもが僕を寂しくさせた。 |