空しさの中に何をつめよう
虚しさの中にどんな理由を入れよう
僕の世界が狭くて君の世界が広いなら僕は君の世界に暮らそう
きっと泣くけれどきっと君は傷つくけれど
でもいいよね、それもきっとよくあることだから

大きくしたって増やしたって何も変わらないのはどうして


「大事にしてたってもう直らないんだよ、捨てなよ」
「直らないことぐらい知ってる、だからって捨てる理由にならないじゃない」
「直せないってことイコール使えないってことさ、理由になるじゃないか」

君は大事そうにそれを抱きしめて離さない。
だから僕は嫉妬もあったし大掃除のついでに未練みたいなものも彼女に捨ててほしかった。彼女は執着しやすい、そして抜けられなくて自分で自分を苦しめる理由ばかりを増やしていく。
多分、苦しみとか悲しみこそが彼女を傷つけるものでありながらどこかで活力になってるのではないかと思える。

「たっくんにはわからないもん。だから放っておいてよ」
「いやいや、お前さ捨てられないものが多すぎるから片付かないんだって」
「でも・・・」

悲しそうな顔をする、まるで僕が彼女を苦しめているようにいや実際そうなのかもしれない。彼女は抜けられないんだ、大切にすることで自分が追い詰められていくことを知らないんだ。

「・・・・・・。なあ、捨てられないのはわかったけどどうするんだよ。部屋のスペースにだって限りはあるんだ。これからまたいろんなものが増えていくかもしれないのに、置いておけないだろ?古いものばかりでいっぱいにするつもりかよ」
「いいよ。私、新しいものなんていらない」
「ふーん、じゃあ。」

どうしてだろう、行き着く答えは全て君を傷つけるものとなる。
まるで僕は金魚鉢に居る金魚の君を傷つける大人しいザリガニみたいだ。
同じ赤だけれど僕は固くゴツゴツした体を持っていて似ているはずなのにきっと色だけ似ているだけで本質の違いは多すぎて、君に寄り添おうとするだけで君を傷つける、手を伸ばそうとすると拒まれる。でも惹かれあう。

二人とも寂しがり屋ででも僕は現実的で君は非現実的。
僕は君の温もりをほしがり、君は昔の一番濃い思い出の中の温もりを抱きしめて離さないように無くさないようにしているんだ、そして時に僕に甘えて満たされない思いを満たそうとしたり僕を誰かに重ねたりする。


「・・・・・、ううん。やっぱり新しいのも必要だからね、もっと広いところに引っ越そうよ」

君は意外と鋭くて僕が言葉を言う前に言葉で被せる。
部屋が広くなったって虚しさが増えていくだけなのに思い出が増えていったってそれを積み上げていたって僕はきっと・・・


「でも、少しは減らせよ。そんなにいっぱいあるなら引っ越してもあまり変わらないと思うけど」


どうせ、僕は彼女にさよならを言いかけるだけで実際いうことが出来ない。
寂しがり屋。失うのは怖いけれど傍に居るのに積もる虚しさに耐えられない。



きっとザリガニは金魚を愛しすぎて食べてしまうかもしれない
だからそうなる前に僕は愛しい金魚を助けてくれる救世主を探さなければいけないと思う、早く虚しさとすれ違いばかりの金魚鉢から君を新しいところへ・・・。

少しの間はきっと金魚は傷つけられたって寂しい気持ちが勘違いを起こして愛だと思ってしまうから。





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