「負けると知りながら勝負をするのはどうして」 兎は首を傾げます 亀は無邪気に笑うと言います 「君のその自信が羨ましいよ」 「答えになっていないわ」 「可能性を探したいんだ」 「馬鹿らしい」 「君のその自信を僕がつもう」 スタートラインに立った時、兎は余裕の笑みを見せる 亀は大きく深呼吸をすると兎に「勝負を受けてくれてありがとう」と落ち着いた表情で言った 風が二匹の頬を撫でる ゴールはスタートから見えないけれど二匹はゴールに向かって走り出した。 勿論、兎があっという間に亀を離していく 兎が立ち止まって振り返り「惨めじゃないの」と苦笑する 「多分、君のほうが僕より惨めで可哀相だと思うよ」 「どうして」 「自分が今までに口にした言葉を思い出せば解るよ」 兎は何も言わずにスピードを上げました 亀はゆっくりと前に進みます 亀がゴールに着いた時、兎はそこにいませんでした |