昨日、僕の部屋のサボテンが枯れた。 大事に育てていたし話しかけたりもしていたのに枯れた。 枯れたサボテンの姿を見たときに僕は悲しさよりも怒りがこみ上げてきた。 小さめの本棚の上に置かれた小さな植木鉢に茶色くなったサボテンがある。 何度見ても変わることがないと知ってても何度も見てしまう。 「ねえ、サボテンどうしたの」 枯れた後も何日かは片付けずに置いていたがさすがに腐ってきたので捨てた。 名残惜しくて土を入れてサボテンの居なくなった植木鉢を元あった場所に置いていた。 彼女は優しく植木鉢を撫でると僕の方を見て首を傾げる。 「こないだ、死んでしまったんだ」 「そうなの。サボテンって意外と弱いのね」 「いや、そうでもないよ」 「ううん、だって貴方が育てていても枯れるのよ」 彼女は僕を真っ直ぐ見つめる、目の奥まで全てを映そうとするかのように。 返事に困ってしどろもどろしていると「悲しかった」と言葉を続ける。 「何が」 「サボテンが死んで」 「それはね、悲しかったよ」 「じゃあ寂しくもなった」 「それはそうさ」 「ねえ、次は私が貴方のサボテンになりたい」 「ははは」 「笑わないでよ、真剣なんだから」 彼女は植木鉢のほうを見て「まだ気持ち捨てられないの」と言う。 そんな会話をしていると思い出した、あのサボテンは前の彼女から貰ったものだったけ。そのこと言ってなかったな、そういえば。 「サボテンのポジションでいいのかよ」 「だってサボテンは私と一緒に居ない時間も貴方と暮らしていたのよ」 「そうムキにならなくてもいいだろう」 「だって・・・、私よりそのサボテンは貴方を知ってた」 「泣くなって、俺は居なくならないしっていうかお前遠まわしだよな」 「・・・・」 僕の腕の中で彼女は子供みたいに泣いていた。 滅多に寂しいだとか甘えてきたりしない強がりなところがあったから可愛く思えた。 「一緒に住みたいって言いたかったんだろう」 「もうサボテンは、育てないでね」 「ははは、お前 俺のサボテンになるんじゃなかったっけっていうか枯れたサボテンに嫉妬するお前どうかと思うけど」 「・・・・ばか」 |