「ぴーちくぱーちく今日も君は忙しいね」
首輪をかけられた僕は狭い小屋で歌う小鳥に話しかけた。すると鳴くのをやめて小鳥は僕を見下ろしていう。小鳥はその名の通り小さいのだが小屋が高いところに吊るされていた。

「私にはこれしか取り柄がないからよ」
「へえ」
「貴方は芸が出来るじゃない、体が大きいしね」
「んーでも君は芸が少なくても家の中に入れて貰えてるだけましだね」
「そうかしら」

首をかしげる小鳥は可愛らしかった。別種の僕から見てもそうだから人間もその姿に惹かれて向かい入れたのだろう。

「家の中は快適だけれどつまらないわよ」
「快適なだけいいだろう。僕は君より見える範囲は広いけれどそれは見えるだけで動ける範囲が限られているんだ。辛いよ」
「何も見えないよりは素敵だと思うわ」
「私は箱の中にまた箱があってその中にいる状態なのよ」
「君って鳥にしては賢いんだね」
「貴方が思うよりどの鳥も賢いわ」

小鳥は少し困ったような顔をした。言ってはいけないことを言ったとかそういうわけではなく何かもっと深い悩みを抱えているようだった。

「どうしたんだ。いつもうるさい君らしくないじゃないか」
「私ね、そろそろ寿命なのよ」
「まだ、ここに来て少ししか経たないだろう」
「貴方と同じ時間を過ごしていても体の中で刻む時のスピードは違うのよ」
「・・・変わらない声で鳴くじゃないか」
「・・・・そうね」

風がカーテンを揺らす。
日が落ちてきたからだろうかさっきよりも冷たい。小鳥の顔を見ているとなんとも言えない気持ちになる。どうしてだろう。

「君には欲しいものがあるの?」
「急に何かと思ったら」
可愛い声で鳴くと小鳥は小屋から少し嘴をだしてわざとらしく小さく呟く。僕が耳を立てないと拾えないような声でね。

「出来るなら、飛びたいわ。まともに羽を広げたことがないのよ。いっつも運動不足ね」

思わず笑ってしまった。今までの深刻さが嘘のように無邪気に言うものだから少しの間笑ってしまって言葉が続かなかった。

「私の夢は叶うかしら」
「叶えたいよ」
「ふふ。ありがとう。その言葉が欲しかったわ。でもお互い囚われの身ね」

鈴のような声でなく小鳥。遠くで音がした。
家の主が帰ってきたようだ。

「部屋がこんなに冷たくなって。大変だわ。暖房つけなくちゃ。窓も開けっ放しで出てたのね」

バタンと勢いよく窓がしめられた。小鳥の声も人の声もかすかに聞こえるぐらいだった。
僕は自分の体が収まるぐらいの小屋に入りながら小鳥のことを考えた。

それから何度か窓が開くことはあったけれど窓際に小鳥小屋が置かれることはなかった。





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