「冬になると君を好きだと改めて感じるよ」
「あなた、寒がりだもんね」
「なんだよ、その顔」

白いため息が出て冷たい空気に混ざって消える。

「だって、貴方はいつでもぬくもりだけを求めてた。寒がりなのはいいけど貴方は温かいならどこでもよかったのかもしれない」
「昔の話はやめろよ」
「現在進行形じゃないの?知らないはずないでしょう。付き合い長いつもりなんだけどな」
「ははは」

図星だった。一番好きなのは彼女なのにぬくもりが欲しくなると誰とでも体を重ねた。どこのうさぎちゃんだよって自分が馬鹿らしくなるし女々しいとも思うけれどやめられなかった。

「どこかでわかってたんだ。私じゃ力不足だってこと。私の体温じゃ貴方の心の奥まで温められないの?」
「誰にも無理さ。君だから無理なんじゃないよ」
「ストレートに言うのね。あなたの一番になりたいわけじゃなかったけど…」
「一番になってるかもしれないとは思ってた?」

頷く君の目には涙が溜まっていた。強がっているんだろうなと思った。なんだかんだ、無神経なこと言ってしまう僕でも沢山の女と付き合ってきたし、経験上感覚でわかる。相手がどう思ってるかとかどうしてほしいかとか。でも、別にぬくもりを貰えれば相手が自分を好きかなんてどうでもよかったから適当な言葉を返した。

「わかってたなら、どうして」
「君もわかってたんだろう。だけど一緒にいたかった。お互いが思ってることが最終的には同じなんだしいいんじゃない」

人間は面倒くさい。本能にさえ意味をつけたがる。
別にそうなってるならそうでいいし、嫌なら嫌でいいんだし。自分なりに生きないと抑えられなくなって小さな鬱憤が積まれて積まれて大きくなって崩れて自分も他人も殺すんだ。

「そうね…」
冷たくなった手で彼女の手を握る。

「温かい」
「相変わらず貴方の手冷たい。優しい」
「心も冷たいさ」

彼女は繋いだ手を一旦放して涙を拭う。
涙のしみ込んだ手でまた僕と手をつなぐ。

彼女の涙がきっと僕の手にも沁みる。彼女のぬくもりは僕がずっと欲しがっていたぬくもりに似ていた。でもいつか離れてしまうかもしれないそのぬくもりの代用を僕は探してしまう。


冬だけが君が隣にいる実感を僕にくれる。
来年もまた同じぬくもりが隣にあるといいと思った。






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