「君は幸せかい?」

白い鳩は近くに止まった烏に聞きました。
烏は最初知らない振りをするように飛び立とうとしました。
すると、鳩はまた呟きます。

「悲しいのかい?君は僕が羨ましいかい?」

烏は少し怒ったように開いた翼を勢いよく音を立ててたたみ
鳩に答えるのではなく言葉を投げ捨てるかのように

「そんな感情持って生きてたらきりがない」
と独り言をぼそっと呟きます

「同じ世界に生まれているのに同じ鳥なのに僕らは平等ではない気がするよ」

鳩は悲しそうな表情を浮かべ語りかけるように言いました
烏は、身震いしました。
烏はそして心の中でそうかもしれないと思いました。
でも言葉にせず、飲み込みました
鳩は、烏の返事を待ってる様子はなく、言葉を続けます。


「君は黒い、僕は白い。そして言われる印象も違うんだ。僕は平和の象徴、でも君は・・・」

「いいよ。言葉にしにくいだろ」

戸惑う鳩の言葉に烏が言葉をかぶせるように言いました。

「僕は今幸せさ。でもこんなに幸せでいいのか考えるんだ。同じ地に暮らし同じ鳥として生きていて自分なりの生活を送っているのに君だって生きる為に生きているのに君が悪いように言われるなんて・・・」

「いいんだ、鳩だって鳩なりに大変だろ。幸せと不幸は紙一重さ。どんな境地に立たされたって同じ地に立っていても立場は違うんだ、だからお互い違う立場で世界を見ているから、君を基準に僕を見ても見つからないものがあるんだよ。でもそうやって何かに気づく、そんな誰かが居てくれて嬉しいよ」

烏は苦笑いを浮かべにしっかりと鳩のほうを向いて言った

「君と話せてよかった。これからお互いなりの幸せを見つけられるように生きていこう。僕なりにしか 見えない世界かもしれない、でも君なりの世界にも光が射すように僕もいろいろ頑張ってみるよ」


「ありがとう。君から沢山の言葉を貰ったのに、この言葉しか出てこないよ」

鳩と烏はお互い目を合わせ

「さよなら、いつかまた会えたとき。同じ視点から世界が 見えたらいいね」

と言葉を交わした。
そして飛び立った。



晴れた空が青く深く輝いていた。




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