凍らない水

もうすぐ2013年は終わってしまうのかとカレンダーを見ても実感を持てずにいた。時は金なりという言葉が強く私を揺さぶったこともあったけれど一時期よりはそれが私の中でうずまき縛り付けようとすることは減ったと思う。寒さで指先が感覚を失う。
何もかも過剰に得てしまうとそれを持っていることを忘れてしまうのではないかと締め切っているのに冷たいままの部屋の中で手を擦り合わせて摩擦熱に期待する。冬眠したいとよくつぶやいていたことを思い出した。冬を強く感じる12月になってから私はそれを思わなくなっていた。どうしてだろう。早とちりして飽きてしまったのだろうか。自分のことなのに他人事のように想像しながら愉快な気持ちになった。人生は楽しんだほうがいいのかもしれない。

そういえば、久しぶりに妹と話し込んだ。父親違いなのだが時々、母に頼まれて子守というのだろうか共に時間を過ごすことがある。妹は私に懐いていていろんな話をしてくれる。低学年なのだがとても賢く無邪気で可愛い。
一緒に絵を書いていると少し悲しそうな顔をして彼女は私に言ったんだ。
「記憶力はあるほうなんだけどね、絵や図形を書くのができないの。私はおかしいのかな」って。
私は彼女の姉であっても家庭に強く結びついてるわけではなかった。けれど彼女と過ごしている中でいくつか思い当たる点があった。重度ではないけれど彼女は”発達障害”を持っているんじゃないかって。でも母親にそれを言うことは出来なかった。神経質なところがあるので変に過保護になったり賢い彼女に対して無駄な気遣いをして欲しくなかった。優しさも時に人を潰すと私は思っている。母親の過剰な思いが彼女の重しになる。実際に彼女は母を嫌っている。このままだと溝ができてしまうな。

私は彼女の問いに対してどう返そうか悩んだけれどこう伝えたんだ。
「そうなんだね。私は記憶力があまりない方だから、羨ましいな。絵は最初は誰でも難しいもの。上手くなりたいって思って焦るんじゃなくて書きたいときに書いたらいい。自分が書いた絵を書きたかったものと見比べて何が足りないか探すのもいいかもしれないね」
上手い言葉は見つからなかったけれど少しでも彼女から”自分には絶対出来ない・無理”なんていう否定的な考えを取り除きたかった。納得いかなくても続けていれば近づけるものがあると思えるように背中をおせたらいいと思った。ただ闇雲に出来る出来るっていうのではなくて貴方にも出来る可能性はある、だからやろうよって一緒に歩いていけたらいいな。

彼女を否定的にしてしまったのは母親なんだけどね。母親も気にしてるみたいだけど性質を変えるのは難しいから私が少しでも彼女を許してあげれたらいいなと思う。私が何か強いるとか押し付けるのではなくて誰かひとりでも”それでもいいんだよ”って言ってくれる人がいたら彼女の心は晴れる、笑顔になるんじゃないかって思ってる。言葉で強いる愛よりも言葉なく寄り添うことがきっと力になるって信じている。




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -