曇りガラス


久しぶりに晴れた。冷たい風に吹かれながら強い日差しを感じると気持ちがいい。この頃、幼い頃のことを思い出して物思いに耽るのが日課になっている。
渇いた冬がそうさせるのか私が冬という季節に何か便乗してそうしてしまうのか。よくわからないけれど私はいつの間にかそんな感覚にのみ込まれ日常の中に潜らせた。

誰かがくれたレッテルが私を苦しめも落ち着かせもしていた。私の中にある言葉ではなく他人に貰った言葉で武装することで攻撃から逃れられると勘違いしていた。どんなに固い鎧を纏っても私は私でしかなかった。何も変わらなかった。それが気休めであると気付いた時には遅かった。
いくつかの言葉の欠片が鎧で防げない音として入ってきて私は思い鎧を揺らしながら耳を塞ごうとしたけれど間に合わなかった。


全てを拒絶したかった。
感情がなくならない限りそれは無理だと知っていた。


言葉のせいにして逃げ出したくなる。言葉に縛られることに慣れて頼ってしまう。人ではなく言葉だけを心の中に閉じ込めようとする。嘘も沢山ついた。本当のことがわからなくなるぐらいの嘘もあった。いつか、始まりの嘘が未来の本当になると信じたかった。


私は大人になれずにいる。
曇りガラス越しに見るような霞んだ世界を捨てられず、褪めない夢を待っている。







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