ハイウェイに入った瞬間、オートボットを含む一行は一斉に走るスピードを上げた。
このペースで行けば、目的の町にはすぐに着けるだろう。

バンブルビーを囲むように走るオプティマス達を見ながら、観月は寝惚けた頭の片隅でそんな事を考えていた。

そんな観月の視界の端では、顔を強張らせたサムとミカエラが頻りに後ろ――観月の座る後部座席の更に向こう側を気にしている。


はて、と観月は首を傾げた。
後ろから聞こえるけたたましいサイレンの音が、寝惚けた頭に響く。
覚えのあるそれに観月は不機嫌そうに眉を顰めると、大きな舌打ちを溢した。

「…カマロ。お前、ココ開けられるか?」

そう言って観月が拳で叩いたのは、自分の真上の天井部。
バンブルビーは出来なくはないとラジオで答えると同時に、観月がしようとしている事を理解したのか、危険だと訴える。
観月はそんなバンブルビーを無視して、エナメルバッグのファスナーを開いた。
ガチャガチャと銃器を整理する観月に、バンブルビーのラジオからジャズとラチェットが待ったを掛ける。

《おい兄ちゃん!!流石にそれは無謀だぜ!?》
《君は自ら死にに行くつもりなのかね?》
「五月蝿ェ、外野は黙ってろ」

観月はドスの利いた低い声でそう言うと、バンブルビーに天井部を開けるよう告げる。
ゆっくりと開いて行くそこを睨み付けながら、観月は口元に不敵な笑みを浮かべた。





「よォ、ポリ公。元気か?」
《!テメェ、あン時の!!》
「へェ、覚えてたか」

偉い偉いと笑う観月は、一部だけオープンカーのようになったバンブルビーの後部座席に、片足を乗せながら器用に立っている。
風を受けて前へと流れる髪を掻き上げながら、観月は獲物を狙う獣のように目を細め、舌舐めずりをした。


――挑発されている。

バリケードがそう考え付く前に、その傍らを走っていたフォースプロテクション・バッファロー――ボーンクラッシャーが、周りの一般車両を押しのけて観月へと近付いて行く。
ボーンクラッシャーは見る間にロボットの姿に変形すると、足のタイヤで滑るようにハイウェイを駆け抜けた。
そして前を走るバスを真ん中から真っ二つにすると、応戦しようとトレーラーから変形したオプティマスに突撃し、ハイウェイの一部を壊しながら落下する。
観月はそれにあからさまに残念そうな溜め息を吐くと、サイレン音を立てながら様子を窺うように走るバリケードに視線を向けた。

「…どうするポリ公。テメェのお仲間を追うか?」
《……そうさせて貰う》
「…そうかよ」

「ならもういい」と観月がつまらなさそうにバンブルビーの後部座席に座れば、バリケードは来た道を逆走して行く。
そして壊れたハイウェイのガードレールから飛び降りた。





『はぁ…』

バリケードが居なくなった事をバンブルビーのバックミラーで確認した観月は、バンブルビーに車体を元に戻させると疲れたように深く息を吐き出す。
事の一部始終を見ていたサムとミカエラ、オートボットは、余りにもあっさりと退いた観月とバリケードに目を瞬かせていた。

「ミツキってあんなに挑発的だっけ」や《バリケードってあんな仲間思いな奴だったか?》といった疑問が各々の頭の中を駆け巡るが、それを声に出す者は誰もいない。


モヤモヤとした物をそれぞれの胸に抱えながら、オプティマスを除いた一行はハイウェイを降りて行く。
遠くに見え始めた巨大なビル郡に、観月はゆっくりとその目を伏せたのだった。





Unexpected meaning
   to read

    "読めぬ真意"





(…ねぇ、ミツキって元からあんななの?)

(…多分、違うと思う)

(…バリケードもあんなに仲間思いじゃねェよなァ…)

("その通り!!""奴は""悪魔だ…!!")

(悪魔…)

(アイアンハイド、なぜそこで私を見るのかね?)





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