「そこの40ミリAPDS弾を使え!!」

武器庫に着くなりシモンズがそう叫んだ。
レノックス達軍人はそれを聞くと、テキパキと使う備品を揃えて戦闘準備に取り掛かる。
観月も何か使わせて貰おうと手を伸ばしたが、近くに居たシモンズに払い退けられた。
観月はそれに不満気に舌打ちを漏らすと、腰元のベレッタを抜いてカートリッジの残弾数を確認し始める。
それにギョッとしたのは、偶々側を通った体躯の良い軍人だった。

「おい兄ちゃん!アンタその銃どっから持って来た!?つか扱い方分かってんのか!?」
「…家から持って来ました。扱い方も貴方達軍人程じゃありませんが分かってます。
 放っといて下さい」

観月は面倒そうにそう言いうと、ベレッタを腰元に仕舞いサムと言い争っているシモンズに視線を向ける。
バンブルビーの解放を巡って言い争っているようだが、シモンズが中々首を縦に振らず、難儀しているようだ。

助け船でも出そうかと観月が一歩踏み出した瞬間、シモンズの態度に痺れを切らしたらしいレノックスが強攻策に出た。

シモンズの左胸に銃口を突き付け、側に停めてあった車のボンネットに乱暴に押し付ける。
その次の瞬間にはエップスを始めとした軍人達と、セクター7のエージェント達が互いに銃口を向け合っていた。
それに慌てたバナチェックが宥めようと声を上げたが、後ろに居た観鶴に銃口を向けられゆっくりとその口を閉ざす。

"脅し"というやり方はかなり荒々しいが、今の状況では一番手っ取り早く、合理的な手段だ。
観月は人知れず笑みを溢すと、ケラーの言葉で動き始めたサム達に続き武器庫を後にした。


◇◆◇◆◇


バンブルビーが収容された部屋の扉を開けると、辺りに電子音の悲鳴が響き渡った。
サム達が必死にバンブルビーに冷却剤を噴き付けている従業員達を止め、バンブルビーの拘束を解いていく。

全ての拘束具が外されたバンブルビーは、寝かされていた台の上からぐるりと周囲を見渡した。
そこでサムやミカエラ、観月以外の大勢の人間――自分を凍らせ、実験していた存在を認識するや否や、バンブルビーは顔のフェイスマスクを勢いよく下ろす。
上体を捻って台から体を起こしたバンブルビーは、右腕をキャノンに変形させるとエネルギーを充填する。

そして、キャノンの銃口を人間達に向けた。
サムが優しく宥めるも興奮しているのかあまり落ち着きが無く、腕を振り回すように銃口を左右に向ける。


そんなバンブルビーの上に小さな影が落ちた。


「落ち着けっつってンだろ、このど阿呆」
《!!!???》
「「ミツキーー!!??」」

バガン!!という鈍い音を立てて、観月の繰り出した蹴りがバンブルビーの脳天を直撃する。
バンブルビーは突然の出来事に電子音を鳴らし、サムとミカエラは観月のいきなりの暴挙に悲鳴じみた声をあげた。
レノックス達は展開に着いて行けていないのか、呆然と成り行きを見守っている。

観月は着地してすぐにバンブルビーに向き直ると、仁王立ちでバンブルビーを見上げた。

「いいか、一回しか言わねェからよォく聞け。 ここにはキューブがあって、もうじきディセプティコンが向かって来る。アンタが酷い目にあったのは知ってるし、警戒する理由も分かるが今は緊急事態だ。
 …分かったらその腕を今すぐ元に戻せ。いいな」

観月はそう言うとバンブルビーから視線を外し、壁際で傍観を決め込んでいた観鶴と観郷の元へと足を向ける。
そんな観月の背後からは、若干落ち着いたらしいバンブルビーに、サムが簡単な状況説明をする声が聞こえていた。




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