パン!!と軽い破裂音を立てて、先頭を走っていた車の前輪2つがパンクし、そこに数台の後続車両が突っ込んでいく。
しかし他の後続車両は器用に事故車を避け、それに小さく舌打ちを溢した観月は、いつの間にか隣に並んでいたアイアンハイドを見上げた。
アイアンハイドは既に腕の銃器を展開しており、観月を後退させると、地面に向かってのパルス砲攻撃で車を足止めする。
増援車両が止まった隙に、オートボット達はビークルモードに戻ってその場から退却し始め、観月達の目の前にはオプティマスの手が差し出された。

《手に乗れ》

そう言われ、言われた通りオプティマスの手に乗れば、そのまま三人はオプティマスの肩へと移動を促される。
三人が各々の場所に掴まると同時に、オプティマスは走り出した。



街の公道を壊しながらの逃走劇の末、何とか見つかる前に橋の裏側へ身を隠す事に成功した観月達だったが、執拗に追いかけてくるヘリが隠れた橋の周辺に留まっており、思うように動けない。

《掴まっていろ》

観月達はそう言ったオプティマスの頭や肩の凹凸に掴まり、息を殺してヘリの動向を窺う。
しかし橋の下を一機のヘリが通過した瞬間、ミカエラがバランスを崩し、助けようとした観月諸共オプティマスから滑り落ちてしまった。
完全に落下する寸前でサムが観月の腕を掴むも、二人分の重さ+αに耐えきれず、三人は落下していく。
オプティマスが観月達を助けようと橋から足を投げ出すが、サムの体に少し触れるだけで終わった。

観月は落下しながら大きな舌打ちを溢すと、空中で素早く受け身の体制をとる。
そしてその一瞬の間に視界の端に映った酷く見覚えのある黄色に、観月は安堵の息を吐き出した。
バンブルビーは一瞬でビークルモードからロボットに戻ると、スライディングしながら一方にサム、もう一方にミカエラをキャッチする。

その弾みでサムのポケットから眼鏡が滑り落ち、地面に当たってカシャンと乾いた音を立てた。

観月はバンブルビーの背に軽く足を着けると、強く踏み切ってもう一度空中に飛び上がり、少し離れた場所に着地する。
無事に着地した観月が着地地点を確認する為に下げていた視線をバンブルビーに戻した瞬間、サムとミカエラを降ろしたバンブルビーの片手首に、周囲を旋回していたヘリから放たれた拘束具が絡み付いた。
そしてそれがもう片方の手首に納まるまでにそう時間はかからず、サムとミカエラは大きく目を見開く。

そんな中、かなり迅速に行動しているセクター7のエージェント達は、サムとミカエラを取り囲んで捕縛した。
それは少し離れた場所で佇んでいた観月も例外ではなく、必死に抵抗しているサムとミカエラと同様に捕縛しようと数人の男が観月に銃口を向けて投降を促す。
観月はそれを鼻で笑うと男達の間を縫うように走り抜け、サムとミカエラを拘束している男達を殴りつけた。
それを見て慌てて自分を取り押さえようと群がってきた男達を蹴り飛ばし、観月は冷却剤を吹き付けられているバンブルビーの元へと駆け寄る。

「怪我したくねェ奴は退きなァ!!!!!」

バンブルビーの元に着いた観月は、近くの男を殴り飛ばしながらそう大きく吠えた。
サムが冷却剤を放つホースを近くの男から奪い取ったのを横目に、観月はその背後に迫る男の鳩尾に膝頭を強く叩き込んでバンブルビーに視線を向ける。
バンブルビーは拘束具に四肢を拘束され冷たい冷却剤を吹き付けられてなお、切なげな電子音を発しながらも観月達の安否を気遣っていた。
既に再拘束されたらしいサムとミカエラは共に車に押し込められ、残るは自分だけという圧倒的不利な状況に観月は大きく舌打ちを溢す。
そして深く息を吐き出すと地面を強く蹴り、バンブルビーに群がる男達に突っ込んで行った。

最初は優勢だった観月だが流石に束になって群がる男達には敵わず、次第に追い詰められていく。
仕舞いには一斉に大人数に押さえ込まれ、逃れようともがいているうちに首筋に麻酔を打たれた。

『っ…く、そ…が…』

即効性の強いものなのか、段々と霞んでいく視界と重くなる体に悪態を吐いて、観月はその場に倒れ込む。

遠くなっていく意識の中、最後に観月が聞いたのは、バンブルビーの発する電子音と自分を罵倒し嘲笑うセクター7の男達の声だった。





   Loud laughter
  not to stop

    "止まぬ哄笑"





(ごめん、)

(君を、君達を助けられなかった)

(私は、)

(なんてちっぽけで)

(無力な人間なんだろう)





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