ドアが開けられ降りるよう促された三人がカマロから降りれば、前方から大型車のエンジン音が響き辺りに漂う煙の隙間からライトの光が漏れる。

サムとミカエラがその眩しさに目を細めるのと、観月が新たに聞こえて来たエンジン音に気付いたのは、ほぼ同時だった。

観月が後方を振り返れば、シルバーのポンティアック・ソルスティスと黒のGMC・トップキック、レスキュー車仕様のハマー・H2と、何とも統一性の無い車種が視認できる程の距離に近付いて来ている。
そして、路地に響いたブレーキの音に顔を前方に戻せば、サムとミカエラの向こう――眩いライトの更に向こうに、ファイヤーパターンが施された青いピータービルト・379トレーラートラックの姿があった。

それを見た観月がサムとミカエラを自分の後ろに下がらせるよりも早く、トレーラーは金属のぶつかり、擦れ合う音を立てながら、どんどんと巨大なロボットへと変形し、それに合わせてサム達の背後に居た他の車達もその形を変えていく。

茫然とそれを見上げる観月達にトレーラーは視線を合わせるように跪くと、ゆっくりと口を開いた。

《アーチボルト・ウィトウィッキーの子孫、サミュエル・ウィトウィッキーはお前か?》
「あ、あぁ…」

突然の出来事に呆然としていたサムがそれでも戸惑いながらもしっかりと頷けば、それを確認したトレーラーが再び口を開いた。

《私はオプティマス・プライム。
 我々は惑星サイバトロンからやってきた、金属生命体だ。》
《オートロボット…オートボットと呼んでくれ》
「オートボット…」

トレーラー――基、オプティマスの隣に立っていたハマーがそう言えば、サムがその組織名を確かめるように呟く。


《よぉ、オネェちゃん》

突然、観月達の後ろに居たソルスティスが、ミカエラに声を掛けた。

当然その事に驚いたミカエラだったが、ソルスティスの言った言葉に嫌そうに眉を顰め、観月が片眉を跳ね上げる。
オプティマスはそんな二人の様子に気付かず、ソルスティスに視線を向けながら口を開いた。


《彼は我が軍の将校だ。名称はジャズ》
《ここ結構イイとこじゃねェか》

紹介されたソルスティス――ジャズは、三人の前で軽快なアクロバットを披露すると、そのまま傍らに放置されていた廃車に音を立てて座る。
それを見ていた観月達はジャズから視線を外すと、オプティマスを見上げた。

「何でそんな風に喋れるの?」
《地球の言語をインターネットを通じて学んだのだ》

自分を見上げながら不思議そうに問いかけてきたサムにそう答えると、オプティマスはその手と視線を黒いトップキックに向ける。

《武器のスペシャリスト、アイアンハイドだ》
《今日はツイてるか、兄ちゃん》

オプティマスの紹介と同時に、トップキック――アイアンハイドが腕を巨大な銃器に変え、それを観月達に向けた。
自分達に突き付けられた銃口にサムとミカエラが息を呑み、観月が反射的に腰元のベレッタに手伸ばせば、オプティマスがアイアンハイドに制止の声をかける。

《よせ、アイアンハイド》
《冗談だ。俺のキャノンを見せたくてな》

どうやら自慢のキャノンを見せたかっただけらしいアイアンハイドに、観月はベレッタに伸ばしていた手を離しながら深い溜め息を吐く。
そして、観月達がアイアンハイドからオプティマスの隣りのハマーに視線を向ければ、ハマーは鼻のような個所をヒクつかせていた。

《我が軍の軍医、ラチェットだ》
《ふむ、フェロモンレベルから察するに、彼は女性と交尾を望んでいる》

彼、と言いながらその鉄の指でサムを指したハマー――ラチェットに、観月は迷わずに腰元からベレッタを引き抜き、発砲する。
しかし、ベレッタの弾はラチェットの鉄の装甲に弾かれ、チュイン、という音と共にラチェットの周囲の壁に吸い込まれて行き、発砲された本人は平然としながら観月を見つめ口を開いた。

《初対面の相手にいきなり発砲とは……失礼ではないかね?》
「変態相手に失礼もクソもあるわきゃ無ェだろうが、このど阿呆!!!」

テメェ一回死に晒せ!!!等とラチェットに罵声を浴びせる観月に、サムとミカエラは互いに顔を合わせずに気まずげな雰囲気でオプティマスを見上げる。

そして、どうやら二人のその視線の意味に気付いたらしいオプティマスがカマロへと視線を向ければ、雰囲気の変化で察したのか、観月がラチェットを罵るのを止めてカマロの方へと視線を向けた。




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