三人が土手を登ろうと斜面に足を踏み出した時、その土手の向こうからズシンと響く足音と共に黄色いロボットが姿を現した。
サムとミカエラは少し強張った表情で黄色いロボットを見つめ、観月は半歩下がって腰を落とす。

「ねぇ、あれ一体何なの…?」
「…ロボットだ…それもただのロボットじゃない……超最先端のロボットだよ…


 …多分、日本製」
「確かに日本人はロボット大好きだが、いくらなんでも日本に夢見すぎだ。ど阿呆めが」

いくら何でも無理無理、と観月はサムの"日本製"発言に構えの体勢のまま即座に否定の言葉をいれた。
それに少し残念そうな顔をしたサムの鳩尾に、観月は何食わぬ顔で拳を食らわせる。
現実をみろ、日本はまだ等身大ガ○ダムの模型しか造れてないぞ。


「ごふっ!!?」
「ちょっとミツキ!?」

何してるのよ!?と殴られた腹を押さえて蹲るサムの背を撫でながら、ミカエラが観月に批難の声を上げる。
しかし観月はミカエラの言葉を無視するように、土手の上に立つ黄色いロボットを見上げた。

「…こっちを襲う機会を伺ってンのか?」
「ミツキ、せめて言葉のキャッチボールをしてくれないかしら」

サムの背を撫でる手を止めずに観月に向けた言葉は、向けられた本人によって黙殺された。

「だ、い丈、夫……大丈夫、襲っては来ないよ」

ごほごほと咳き込みながらそう言ったサムを支えながら、ミカエラは訝しげに口を開く。

「…本当に?たった今ロボット同士のデスマッチ見たばっかりじゃない!」
「…サムの言う通り、なんか大丈夫そうだぜ?あいつからは敵意も殺意も感じねェし」

穏やかなモンだ、と黄色いロボットを見上げながら言った観月の言葉に頷いて、サムはゆっくりと土手を登り出した。

「ちょっとサム!?」
「大丈夫、心配ないよ……ねぇ君、話せる?」

不安そうな表情で自分を窘めるミカエラにぎこちなく笑って、サムは黄色いロボットに話しかけ、そんな二人の後ろでは観月が黙って傍観の姿勢を取っている。
三者三様で自分を見上げている三人の前で、黄色いロボットはその巨大な体から電子音を響かせ始めた。


《"――こちらはMXサテライト…"》
《"この放送はケーブルでお伝え…"》
《"…ちらはCBS放送です"》
「…ラジオで会話すンのか?」

ロボットから聞こえたラジオ音声に観月が少しだけ目を見開いて呟けば、ロボットがパチパチと―実際はガチャガチャとだが―手を叩いて、感嘆の色を示す。

《"素晴らしい!!いやぁ、お見事です!"》
「……ありがとう?」

ロボットの反応に観月が苦笑気味に礼を述べれば、話が一段落したのを見計らったサムがロボットに向かって口を開いた。


「ねぇ、昨夜のあれは何?」

《"宇宙艦隊から…"》
《"膨大な宇宙の彼方より…"》
《"天使が降りてきたぞ!!天からの訪問者!ハレルヤ!!"》

サムの疑問に継ぎ接ぎのラジオで答えながら空を仰いだロボットに、ミカエラが不思議そうに声をかける。

「"天からの訪問者"…?
 貴方、エイリアンか何かなの?」

首を傾げて問うミカエラに電子音を立てて頷いたロボットは、素早く元のおんぼろカマロに戻ると《"他に聞きたい事はあるか?"》とラジオ音声を流しながら助手席の扉を開けた。


「…"乗れ"ってよ」
「…どうするの?」
「…50年後、"あの時乗っておけば良かった"って後悔したくないだろ?」

サムが困ったような視線を向けてきたミカエラにそう言ってカマロに乗り込めば、諦めたような顔でミカエラが続く。
観月は面白そうな事の始まりに笑みを浮かべ、ゆっくりとした足取りでカマロに乗り込んだ。





  When was cast
   "賽は投げられた"





(そういえばさ、ミツキ)

(あ?)

(日本にこの車みたいなロボットはいないの?)

(いねェよ!!!むしろ本気で作るためにエンジニアの方々が日夜頑張ってらっしゃいますけど!!!???)

(え!?じゃあダイ○ーシティのガ○ダムは!!?)

(ただの実寸大!!!人は乗れません動かせません!!!!てか何でダ○バーシティ知ってンだテメェ!!!)

(カマロが言えって…)

(カマロォォォォォォ!!!!!)






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